太陽熱土壌消毒は高温における硝化活性を高める

要約

45~50°Cで数週間処理した土壌は、30°Cにおける硝化活性は低下するが、高温における硝化活性は高まる。前年に太陽熱土壌消毒した土壌は、消毒していない土壌に比べ、45°Cにおける硝化が進みやすい。

  • キーワード:太陽熱土壌消毒、硝化、窒素動態、高温耐性
  • 担当:総合的土壌管理・土壌養分管理
  • 代表連絡先:029-838-8481
  • 研究所名:中央農業総合研究センター・土壌肥料研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

太陽熱土壌消毒は、土壌をフィルム被覆し、地温を上昇させて消毒効果を得る防除技術である。この消毒は対象病原菌等ばかりでなく、土壌中の養分動態にも影響を与えると考えられる。
通常の畑土壌では、アンモニアは数週間以内に硝化されるが、消毒に伴い一時的に硝化活性が低下することが知られている(和田ら、2008)。一方で、消毒の初年目に比べて2年目には硝化の抑制が軽減するという指摘もあるが、その検証事例は乏しい。そこで、高温条件下における硝化活性に注目して、消毒の影響を評価した。

成果の内容・特徴

  • 前年に太陽熱土壌消毒を行った土壌は、太陽熱土壌消毒を行わなかった土壌に比べて、45°Cで硝化が進みやすい(図1)。前年に消毒した土壌では、未消毒土壌に比べて45°Cで計測されるアンモニアの硝化にかかわる菌数が多い(表1)。
  • 土壌を45、50°Cの高温で数週間処理すると、処理前土壌に比べ30°Cにおける硝化活性は低下する。一方、45、50°Cでの硝化活性は高まる(図2)。
  • 上記から、太陽熱土壌消毒やそれを模した45~50°C処理は、高温での硝化活性を高め、また、その影響は、消毒翌年まで持続するといえる。

成果の活用面・留意点

  • 太陽熱土壌消毒の効果を得るためには、地温を40~45°C以上で一定期間以上処理することが有効とされる(例えば小玉ら、1982)。
  • 本研究では、茨城県つくば市にある露地畑において7~8月に36~43日間の太陽熱消毒を行った。最高地温は、深さ1cmでは60°C以上、深さ5cmでは50°C以上、深さ15 cmでは40°C以上であった。

具体的データ

その他

  • 中課題名:土壌・資材の評価と肥効改善による効率的養分管理技術の開発
  • 中課題整理番号:151a1
  • 予算区分:交付金、競争的資金(農食事業)
  • 研究期間:2010~2015年度
  • 研究担当者:井原啓貴、加藤直人、高橋茂、長岡一成
  • 発表論文等:Ihara H. et al. (2014) Soil Sci. Plant Nutr., 60(6), 824-831