シハロホップブチル抵抗性ヒメタイヌビエにおける多除草剤抵抗性と有効な除草剤
要約
岡山県の水稲乾田直播栽培で確認されたシハロホップブチル抵抗性ヒメタイヌビエには、代替除草剤として使用されるペノキススラムにも抵抗性を示す系統がある。その防除にはビスピリバックナトリウム塩などが有効で、入水後一発処理剤も有効な場合が多い。
- キーワード:除草剤抵抗性、水稲乾田直播栽培、ヒメタイヌビエ、シハロホップブチル、ペノキススラム
- 担当:環境保全型防除・生態的雑草管理
- 代表連絡先:電話029-838-8481
- 研究所名:中央農業総合研究センター・生産体系研究領域
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
岡山県の水稲乾田直播栽培では乾田期のノビエ防除にシハロホップブチルが多用されていたが、2009年にシハロホップブチル抵抗性ヒメタイヌビエが確認された。そのため同じ乾田期の茎葉処理剤として登録のあるペノキススラムを代替除草剤として防除する除草体系が提案された。しかし現地の抵抗性ヒメタイヌビエを調べたところペノキススラムに抵抗性を示す系統があったことから、本成果ではその内容を報告するとともに、ペノキススラム抵抗性系統にも有効な除草剤成分の確認を行う。
成果の内容・特徴
- 岡山県で発生するシハロホップブチル抵抗性ヒメタイヌビエには、ペノキススラムにも抵抗性を示す系統がある(図1、図2)。
- ペノキススラムに強い抵抗性を示す系統は、プロピリスルフロン、ピリミノバックメチルにも抵抗性を示す(図3)。
- 水稲乾田直播栽培の乾田期処理として登録のあるノビエに有効な除草剤の中では、茎葉処理剤のビスピリバックナトリウム塩、土壌処理剤のブタクロールおよびベンチオカーブの効果が高い(図3)
- 直播栽培の入水後処理除草剤として登録のある一発処理型除草剤は、ノビエに有効な成分としてピラクロニル、フェントラザミド、オキサジクロメホンのいずれかを含むものが多いが、これらは効果が高い(図3)。
成果の活用面・留意点
- シハロホップブチルおよびペノキススラムによって防除できないヒメタイヌビエが発生する圃場では、本成果に示す有効成分を含む除草剤を活用して防除する。
- 米国ではビスピリバックナトリウム塩抵抗性のタイヌビエが既に確認されていることから、ビスピリバックナトリウム塩だけに依存した除草体系とせず、他の有効成分も活用して防除する。
- 本成果は岡山県の2箇所の水稲乾田直播栽培水田から2010年に採取したヒメタイヌビエの自殖後代を用いて、茨城県つくば市において2013年~2015年にワグネルポットを用いて行った試験の結果である。
具体的データ
その他
- 中課題名:生物情報に基づく帰化雑草の侵入・まん延警戒システムと長期的雑草管理法の構築
- 中課題整理番号:152d0
- 予算区分:交付金、その他外部資金(その他)
- 研究期間:2011~2015年度
- 研究担当者:内野彰、岩上哲史、松嶋賢一、渡邊寛明、橋本匡人(植調研)、濱村謙史朗(植調研)
- 発表論文等:Iwakami S. et al. (2015) Pestic. Biochem. Physiol. 119:1-8