多目的型CA貯蔵法の開発

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要約

青果物の少量多品目、高品質流通を低コストで行うために、プラスチック容器、フレキシブルコンテナ、袋等低コスト資材を貯蔵容器とし、既存の冷凍コンテナ、冷凍トラック、冷蔵庫等で貯蔵、流通を通じての多品目同時貯蔵及び混載輸送が可能な多目的型CA貯蔵法を開発した。

  • 担当:食品総合研究所・食品工学部・流通工学研究室
  • 代表連絡先:0298-38-8027
  • 部会名:食品
  • 専門:加工利用
  • 対象:
  • 分類:普及

背景

食生活の高級化、多様化が進む中で青果物においても少量多品目の高品質流通が要求され、これに対応した生産から消費まで一貫した流通技術の開発が求められている。
従来からリンゴ、ニンニク等で実用化されているCA貯蔵は、品質保持効果は高いが設備、貯蔵コストが高く、多品目貯蔵が出来ない。
そこでこれらの欠点を解消し、しかも貯蔵、流通を通じて対応が可能なCA貯蔵法を開発した。

成果の内容・特徴

  • プラスチック容器、フレキシブルコンテナ、袋等低コスト資材を貯蔵容器とし、窒素ガスと圧縮空気の流量制御によって複数の貯蔵容器内ガス濃度の最適化を図る汎用的な多目的型CA貯蔵装置(図1)と制御プログラムを開発した。
    その仕様は耐振動衝撃性を有すること、結露、高温等悪環境に強いこと、停電の復帰時に自動的に起動しコントロールプログラムが正常に動作すること、コントロールの条件設定操作が簡単なこと、故障時のメンテナンスが容易であること等である。本装置によって既存の冷凍コンテナ、冷凍トラック、冷凍庫等で、同一温度帯での多品目同時貯蔵及び混載輸送が可能である。
  • 図2のように制御プログラムは、メニュー選択で貯蔵条件等の設定、ファイルからの入力、貯蔵開始、終了が選択でき、しかも貯蔵途中での設定値の変更や貯蔵の一時停止、終了等に対応するため割り込み入力によってメニュー選択に戻るように構成した。ガス置換は最小限の置換量で酸素濃度を設定範囲の上限値に、炭酸ガス濃度を下限値にコントロールできるプログラムを作成し、その精度向上のために貯蔵容器の青果物を除いた真の容積を正確に求める工夫をした。その結果、図3の酸素濃度5±0.5%、炭酸ガス濃度6±0.5%での貯蔵例のように高い制御精度が得られた。
  • 青果物の貯蔵試験の結果、パインアップルは2週間、ランは包装状態で10日間、アスパラガスは1カ月間、青梅は2カ月以上、サクランボは1カ月間、西洋梨、柿は4カ月以上の品質保持が可能であった。

成果の活用面・留意点

本装置は青果物の最適貯蔵条件を検討するための装置としても活用できる。
また生産、流通の現場で利用する場合には最適貯蔵条件(貯蔵温度、酸素濃度、炭酸ガス濃度)を見い出して、その条件によって行う。
また最適貯蔵温度が同一温度地帯での多品目同時貯蔵は同一貯蔵庫で可能であるが、異なる温度帯の多品目貯蔵は複数の貯蔵庫を使用する必要がある。

具体的データ

図1 多目的型CA貯蔵装置
図2 制御プログラムの流れ図
図3 貯蔵中ガス濃度の変化

その他

  • 研究課題名:多目的型CA貯蔵法の開発
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成5年度(平成2~5年)
  • 研究担当者:井尻 勉
  • 発表論文等:簡易CA貯蔵法による低コスト・高品質流通技術の開発 農業機械学会第49回大会講要、1990