てんさいを原料とするアルコール発酵化技術の開発

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要約

てんさいをアルコール発酵用の原料にするために、資源の高度利用の立場から、ビート・パルプの糖化工程に関して検討し、バイオリアクターの構築にあたって、ペクチナーゼの固定化酵素としての利用技術を開発した。

  • 担当:食品総合研究所・生物機能開発部・分子機能開発研究室
  • 代表連絡先:0298-38-8079
  • 部会名:食品
  • 専門:資源利用
  • 対象:工芸作物類
  • 分類:指導

背景

本研究では生物資源の有効利用の観点から、ショ糖製造原料としてのてんさいを、アルコール発酵用基材として効率的に利用する技術開発を目的としている。
これ迄にビート・パルプの酵素糖化を中心に検討を進めた結果、市販品のメイセラーゼ、ペクチナーゼ等を用いて相乗的に酵素分解を高めることができた。
また、酵母では非資化性の著量のウロン酸の酵素的変換法を検討すると共にビート・パルプの酵素糖化試料からの工タノール生成反応を中心に、工タノール生産に寄与する因子を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • ビート・パルプの糖化率を高める方策として、ペクチナーゼ、セルラーゼなどを複合酵素系の形で利用することが有効であった(表1)。
  • ペクチナーゼを可溶性担体のデキストランージアルデヒド(D-CL)に固定化するための反応条件を検討し、60%以上の活性が保持されることを明らかにした(図1)。
  • ペクチナーゼー D-CE複合体をHPLC(Tosoh G3000SW)カラムで分析し、複合体の分子量変化が小さいことを明らかにした(図2)。
  • ペクチナーゼを不活性担体のセルロースージアルデヒド(D-CE)に固定化する反応を2.で確立した条件に基づいて行った(図3)。

成果の活用面・留意点

てんさいをアルコール発酵用の原料として利用する場合に、ビート・パルプはいわゆる、バイオマスに相当する成分である。
本研究ではこのビート・パルプを酵素糖化処理によってアルコール原料に提供するプロセスを検討してきたが、ペクチン画分などに広く分布しているウロン酸をアルコール用原料に変換する系が重要な検討課題として浮上してきた。

具体的データ

表1 ビート・パルプ分解酵素の反応初速度の比較
図1 デキストラン・ジアルデヒドとペクチナーゼの結合反応に及ぼすpHの影響
図2 ペクチナーゼ-デキストラン複合体のHPLC分析
図3 セルロース・ジアルデヒドとペクチナーゼの結合反応

その他

  • 研究課題名:てんさいを原料とするアルコール発酵化技術の開発
  • 予算区分:大型別枠(新需要創出)
  • 研究期間:平成6年度(平成3~5年度)
  • 研究担当者:小林幹彦、舟根和美
  • 発表論文等:Sugar Composition of Beet Pulp Polysaccharides and Their Enzymatic Hydrolysis. Biosci. Biotech. Biochem., 57(6), 998-1000, 1993.