紫外線防止機能を有する植物成分の解明と利用
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要約
タマネギ等食用植物に存在する黄色色素のフラボノイド類に、紫外線の害作用を防止する機能があることを明らかにし、配糖体を種々調製しその活性と構造の関係を解析した。それらの化粧品や食品への応用が期待される。
- 担当:食品総合研究所・食品機能部・機能成分研究室
- 代表連絡先:0298-38-8055
- 部会名:食品
- 専門:食品品質
- 対象:葉茎菜類
- 分類:研究
背景
地球環境の悪化によるオゾン層の破壊が確認され始め、紫外線の地表への到達量が増加するものと懸念されている。この紫外線は、物質に対する化学的な作用が強く、人間では単純な日焼けのみならずシミやソバカスの原因になり、また皮膚癌を誘発する可能性も指摘されている。
このことから、既に化粧品においては紫外線カット機能を付与した商品が出回っており、消費者の関心の度合いも高まりつつある。
本課題では紫外線防止機能のアッセイ法を確立すると共に、安全な食用植物から紫外線防止機能を有する成分を見つけ出し、有効成分の同定並びに構造と活性の相関を解析し、化粧品や食品への応用の資料を得ることをねらいとしている。
成果の内容・特徴
- 動物培養細胞U937を用いて、紫外線の致死作用を阻害することを指標とする、紫外線防止機能成分の検索方法を確立した。
- 上記手法により市販の種々の植物色素類の中で、タマネギ色素に活性が存在することを明らかにした。
- タマネギ色素の主たる活性成分はケルセチン-3、4'-ジグルコシドであることを明らかにした(図1)。
- ケルセチン配糖体を化学合成により、種々合成し活性と構造の関係を解析したところ、フラボノールのモノグルコシドでは、3位に糖が結合した配糖体の活性が強く、4'一位に結合したものには活性が弱いことを明らかにした(図2、3)。
- ケンフェロールをアグリコンとする配糖体をダイコン葉から抽出分離し、紫外線防止機能を検討したところ、3位に糖類が結合した種々の配糖体に活性が認められた。
成果の活用面・留意点
多くのフラボノイド配糖体に紫外線防止機能が認められるが、その詳細なメカニズムについてはさらに研究を要する。
また、化粧品等への利用では、化粧品素材の単価がかなり安価であることから、コストの低減化が重要な課題である。
具体的データ



その他
- 研究課題名:
- 予算区分:共同研究(マルハ中央研究所)
- 研究期間:平成5年度(平成5年~6年)
- 研究担当者:津志田藤二郎、新本洋二、小堀真珠子、篠原和毅
- 発表論文等:Effect of onion pigments on the killing effect of ultraviolet irradiation toward human monocyte or macrophage-like cells: Nippon Shokuhin Kogyo Gakkaishi, 40, 149(1993)