貯蔵農産物の品質劣化判定法に利用できる新しい脂質過酸化度評価法

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要約

農産物に適用可能な脂質過酸化度評価法を開発した。高感度、高選択的、かつ簡易な分析法であり、従来測定が困難であった野菜類・果実類・いも類の脂質過酸化度を求めることができる。また貯蔵農産物の品質劣化判定法としても利用できる。

  • 担当:九州農業試験場・作物開発部・流通利用研究室
  • 代表連絡先:096-242-1150
  • 部会名:食品、流通加工
  • 専門:食品品質
  • 対象:
  • 分類:研究

背景

消費二一ズの高度化に伴い、農産物でも高品質化が求められている。品質を保証した農産物を供給するには、品質の劣化程度が判定できる評価技術を必要とするが、未だ満足できる簡易な分析法がない。本研究では、農産物中に極微量含まれる過酸化脂質を高感度、高選択的、簡易に測定できる手法を開発し、貯蔵農産物の品質劣化判定法としての利用を試みた。

成果の内容・特徴

  • 開発した脂質過酸化度評価手法のプロトコールを図1に示す。ジエチルチオバルビツール酸(DETBA)と過酸化脂質との反応物(DETBA反応物質)を蛍光法により測定する。反応液中に100-2,000pmolの過酸化脂質を含む場合には蛍光光度計法で、100pmol以下の場合には蛍光検出-HPLC法で測定する。可視測定法と異なり、本測定法は夾雑物質の影響をほとんど受けず、また高感度である。
  • 蛍光光度計法あるいは蛍光検出-HPLC法のいずれかを用いることにより、従来測定が困難であった野菜類・果実類・いも類の脂質過酸化度を求めることができた(表1)。
  • 開発した評価手法の品質劣化判定法としての利用を試みた。8ケ月貯蔵した甘しょ(図2)、0~14日間貯蔵したさやえんどう(図3)ともに、品質劣化の進行に伴いDETBA反応物質が増加し、その生成量は他の品質劣化指標の増減と関連し、農産物の品質劣化判定法として利用できることが判明した。

成果の活用面・留意点

他の脂質過酸化度測定法と同様、本法で求まるDETBA反応物質の量は過酸化脂質の絶対量ではないので、あくまでも過酸化反応の尺度として利用すべきである。この点に留意すれば、貯蔵・流通過程におこる品質劣化の判定等、利用範囲は広い。

具体的データ

表1 DETBA-蛍光測定法により測定した物質中のDBTBA反応物資
図2 8か月貯蔵甘しょ「高系14号」中のDETBA反応物資と白色度、アスコルビン酸量との関係
図3 さやえんどう貯蔵中のDETBA反応物資の増加と色調変化、クロロフィル、アスコルビン酸量との関係

その他

  • 研究課題名:農産物の活性酸素生成能評価手法の開発(重点基礎)/農産物の活性酸素生成を制御する流通技術の開発(経常)/非破壊的手法等による暖地畑作農産物の品質劣化判定技術の開発(総合的開発)
  • 予算区分:重点基礎・経常・総合的開発(高収益畑作)
  • 研究期間:平成5年度(平成4年~8年)
  • 研究担当者:須田郁夫・吉田 牧・西場洋一
  • 発表論文等:Fluorometric determination of 1,3-diethyl-2-thiobarbituric acid-malondialdehyde adduct as an index of lipid peroxidation in plant materials,Biosci.Biotech.Biochem., 58(1), 14-17(1994).