キャピラリ一電気泳動による食品機能成分の迅速分析技術の確立

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要約

新しい高感度・微量分析手法として近年、生化学・分析化学等の分野で注目されつつあるキャピラリー電気泳動の特性を解明し、アミノ酸、オリゴペプチド、食用色素など各種食品機能成分の微量迅速分析技術としての確立を図った。

  • 担当:食品総合研究所・応用微生物部・酵素利用研究室
  • 代表連絡先:0298-38-8071
  • 部会名:食品
  • 専門:食品品質
  • 対象:
  • 分類:研究

背景

キャピラリー電気泳動は数多くの有機化合物や生体成分の分析に応用され、新しい高感度・微量分析技術として注目されている。本装置の食品分野への導入に際しての特性を解明し、オリゴペプチド、アミノ酸、食用色素等、多様な食品機能成分の微量迅速分析技術の開発を行うことを目的とする。

成果の内容・特徴

  • ペプチダーゼの迅速な活性測定に資するため、オクタペプチドであるダイノルフィンAおよびそのサブフラグメントである18種のペプチド、さらにその構成アミノ酸である三種のアミノ酸の計21成分の同時分析を試みた結果、自由界面およびSDSミセル動電クロマトグラフィーの二つの分離モードを用いることにより、25分以内に類縁ペプチドの重なりのない良好な定性・定量分析を行い得ることを確認した(図1)。
  • 上記方法を用いて、チーズスターターである乳酸菌、Lactococcus lactis 712株よりトリペプチドにのみ作用する新しい酵素、トリペプチドアミノペプチダーゼを検出、分離精製および反応解析に応用可能なことを明らかにした(図2)。
  • 構造が類似し、分析条件の煩雑な食用夕一ル系色素および残留農薬等の簡便迅速な分析法の確立のため、タール系色素35種、殺菌剤・除草剤9種について泳動条件を検討した。水溶性色素では、pH8およびpH2での自由界面電気泳動ならびにSDSミセル動電クロマトグラフィーにより、いずれも30分以内に良好な定性・定量分析を行うことができた(表1)。
  • 無電荷、非水溶性の殺菌剤・除草剤およびタール系色素については、トリフルオロ酢酸および疎水性ペアー形成試薬を含むアセトニトリルを泳動媒体とする非水系モードの開発により、水系と同様な条件下で分離・分析が可能なことを確認した(図3)。

成果の活用面・留意点

本法は極微量の試料(数~数十ナノリットル)で高感度な分析が可能であること、HPLCのように試料によってカラムや溶媒を選択する必要がなく、一本のキャピラリーで分離モードだけを換えることによって多様な試料に対応できるなどの特徴を有する。従って、食品等に含まれる微量成分の簡易迅速分析法として広く応用が可能である。しかし反面、機器開発の歴史が浅いため不備な点もあり、キャピラリーの個体差などによってデータにばらつきがでやすいので、実際の分析に当たっては機器の特性を十分把握しておく必要がある。

具体的データ

図1 自由界面モードによるオリゴペプチドの分離パターン
図2 Lactococcus lactis 712ペプチダーゼのクロマトグラム
表1 ミセル動電クロマトグラフィーによる、食用色素の分離係数
図3 非水系モードによる農薬等の分離パターン

その他

  • 研究課題名:キャピラリー電気泳動による食品機能成分の迅速分析技術の確立
  • 予算区分:経常(一部緊急開発(チーズ)を含む)
  • 研究期間:平成5年度(平成3~5年)
  • 研究担当者:春見隆文、葛原茂広
  • 発表論文等:高性能キャピラリー電気泳動(HPCE)によるオリゴペプチドおよびペプチダーゼ活性の測定 日本農芸化学会誌、67(3)、85(1993)
                      高性能キャピラリー電気泳動(HPCE)を用いた食品中の夕一ル系色素および残留農薬の分析日本 農芸化学会誌、67(3)、85(1993)
                      色素または農薬の分析方法 日本国特許 特願平 5-222766(1993.8)