ランダムプライマーを用いる遺伝子判別法(RAPD法)による精米の品種判別技術

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要約

精米や粉末の状態で品種判別を行うことを目的に、RAPD法による検討を行った結果、適正プライマーを8種類選定し、近縁品種が多い国内作付け上位10品種を全て互いに識別することが可能となった。

  • 担当:食品総合研究所・素材利用部・穀類特性研究室
  • 代表連絡先:0298-38-8045
  • 部会名:食品
  • 専門:バイテク
  • 対象:稲類
  • 分類:普及

背景

従来、稲の品種判別には、植物体の草型、葉色、交配稔実性、酵素多型、種子粒型等が用いられ、試料としても、植物体全体や、幼葉、籾、玄米等が必要とされてきた。近年、米流通の自由化や精米の表示制度の変更等の理由から、精米や粉末の段階でも品種判別が可能となる技術の開発が求められている。そこで、本研究では、国内産良食味品種を対象に、RAPD法(Random Amplified Polymorphic DNA Method)を利用した、精米段階での品種判別技術の開発を目的とした。

成果の内容・特徴

  • 国内作付け上位10品種(コシヒカリ、ひとめぼれ、あきたこまち、ヒノヒカリ、日本晴、きらら397、ササニシキ、ゆきひかり、キヌヒカリ、むつほまれ)の精米を対象とし、超遠心粉砕機で得た粉末(6g)からCTAB(セチルトリメチルアンモニウムブロミド)法(Rogers & Bendich,1988)によって効率よくDNAを抽出した。
  • 上記DNAを、600種類の市販プライマー(10量体)を用いてPCR法(変性94°C、アニ-リング36°C、伸長反応72°C、45サイクル)によって増幅し、アガロース電気泳動によるバンドパターンの比較を行い、識別性があり、かつ再現性の良いプライマーを8種類選定し、それぞれの増幅DNAの電気泳動結果から適正な識別バンドを選択した(図1)。
  • 選定プライマーを用いて増幅したDNAの電気泳動の結果から、上記の識別バンドの有無を+と-で表示して比較した結果、10品種全てを互いに識別できることが明らかとなった(表1)。

成果の活用面・留意点

異なるPCR装置を用いる場合は、温度、時間等を微調整して再現性の良い結果とする必要がある。

具体的データ

図1 各種のプライマーで増幅した精米DNAの電気泳動結果
表1 10品種の精米に対する各プライマーの識別法

その他

  • 研究課題名:国内産および外国産米の特性解明
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成8年度(平成6年~8年)
  • 研究担当者:大坪研一、豊島英親、岡留博司、藤井 剛(食糧庁)、川崎信二(生物研)
  • 発表論文等:精米の品種判別技術の検討,日食科工学会第42回講要,1995.
                      日本型米の品種/産地の判別技術の検討,日食科工学会第43回講要,1996.
                      RAPD法による近縁良食味精米の品種判別技術,育種学雑誌,46巻別2号,1996.
                      RAPD法を用いた国内産精米の品種判別技術,日食科工誌(1997年5号掲載予定).