焼成カルシウムによる微生物制御

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要約

栄養補給の目的で食品に使用されてきた焼成カルシウムは抗菌性も有し、食品加工や流通に応用すると微生物制御効果を示す。

  • 担当:食品総合研究所・流通保全部・上席研究官室
  • 代表連絡先:0298-38-8067
  • 部会名:食品
  • 専門:食品品質
  • 対象:食品
  • 分類:普及

背景

食中毒菌やマイコトキシン産生菌ならびに食品の腐敗に関与する微生物の増殖制御は、食料の安全性確保ならびに有効利用のために克服すべき課題の一つである。本研究では、食材の中の抗菌性物質を検索し、その抗菌性の食料保存への活用を目的とした。

成果の内容・特徴

  • 栄養補給の目的で長年食品に使用されていた焼成カキ殻カルシウムが、抗菌性を示した。以下の実験は、カキ殻の表面を研磨し、内部の真珠層のみを通電ジュール加熱処理(220V、60~100A、60分間)した約320メッシュの白色微粉末の焼成カルシウムを用いて行った。
  • 細菌に対する最小生育阻止濃度は0.07~0.1%であった。病原性大腸菌O157に対して通常の大腸菌と同様な抗菌性を示した。酵母は、さらに低い濃度で生育を抑制された。
  • 中華麺等では、焼成カルシウム粉末の直接混合あるいは練り込みによって菌数の低減や日持ちの向上が観察された(表1)。
  • 野菜や肉類は、表2のように懸濁液に一定時間浸漬する方法が実用的であり、大量処理にも適していた。次亜塩素酸ナトリウム処理では必要となる後洗浄も不要であり、カルシウム含量も増加した。
  • 懸濁液の上清を食品に添加し混合する方法も有効であった。練りあんや水ようかんでは、上清液の利用によりカビの発生が抑制されるとともに、離水が防止される現象も観察された(表3)。

成果の活用面・留意点

基本的な衛生管理を行なった上で、微生物制御のための組み合わせ技術の一つとして抗菌性物質を有効に利用すべきである。微生物制御技術の組み合わせはケースバイケースで選択する必要がある。焼成カルシウムは水分と反応しアルカリ性を示すので、色、味、香り等に変化を与える場合があった。従来品との差がない方が良いと考える場合には、最終製品ではpHを調整する使い方も可能であった。

具体的データ

表1 焼成カルシウム添加による菌数の低減と増殖抑制
表2 焼成カルシウム懸濁液侵漬処理による菌数の低減と増殖抑制
表3 0.1%焼成カルシウム懸濁液上清添加による発カビの抑制

その他

  • 研究課題名:食品中の有害微生物の挙動と制御
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成8年度(平成3~8年)
  • 研究担当者:一色賢司、徳岡敬子
  • 発表論文等:日本食品工業学会誌、41, 135-140 (1994).
                      日本食品科学工学会誌、42, 268-272(1995).
                      日本食品科学工学会誌、42, 442-445(1995).