酵素を活用したキトサンオリゴ糖の調製法

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要約

キチンオリゴ糖を酵素的に脱アセチル化することによって、キトサンオリゴ糖を調製する方法を開発した。現在行われている、熱濃アルカリによる脱アセチル化工程に代わる、常温、中性条件での温和な反応工程の開発へとつながる。

  • 担当:食品総合研究所・素材利用部・資源素材化研究室
  • 代表連絡先:0298-38-8061
  • 部会名:食品
  • 専門:微生物・酵素
  • 対象:
  • 分類:研究

背景

カニ殻やエビ殻等の食品廃棄物資源から調製されるキトサンは、抗菌性、コレステロール吸収抑制作用などを備えた食品素材として、その需要が急速に高まってきた。一方、キトサンオリゴ糖は抗菌活性、抗カビ活性、抗う蝕活性等の生理活性をもち、高分子キトサンと比較して低粘性、低苦味性、水溶性等の利点を備えた食品素材として注目されている。しかしながら、現在、キトサンオリゴ糖は熱濃アルカリを用いた脱アセチル化工程を経て調製されており、中和処理、廃水処理等の問題により、食品素材スケールでの大量調製には至っていない。この様な背景から、キトサンオリゴ糖を効率的に調製する方法の開発が求められている。そこで、問題となるアルカリ廃水を全く生成しないキチン質の脱アセチル化法として、酵素法に注目し、その可能性について検討を行うこととした。

成果の内容・特徴

  • 不完全菌Colletotrichum lindemuthianum (ATCC 56676) の菌体培養液からキチン脱アセチル化酵素を電気泳動的に単一バンドにまで精製した。
  • 精製酵素を用いて酵素の諸特性を解明した結果、本酵素は生成物である酢酸塩による反応阻害を受けにくく、工業的活用に適することが明らかになった(図1)。さらに、2量体以上のキチンオリゴ糖に対して脱アセチル化活性が見られた。
  • 生理活性をもつといわれるキチン6量体を基質として、酵素反応をHPLCによってモニターした結果、基質由来の保持時間17分付近のピークの減少に伴い、保持時間約13分のピークが増大し、最終的には保持時間約13分のピークのみとなった(図2)。このピークはキトサン6量体標品のピーク位置と一致した。
  • 3.において保持時間13分付近に検出された反応生成物を回収し、FAB-MSによって質量分析を行った結果(図3)、この生成物はキトサン6量体であると推定された。

成果の活用面・留意点

現在の、キチンを熱濃アルカリ中で徹底的に脱アセチル化して、100%脱アセチル化キトサンに変換してから低分子化するというキトサンオリゴ糖の調製法に代わる、キチンをまず低分子化してから酵素的に脱アセチル化するという温和な調製法の開発へとつながることが期待される。

具体的データ

図1
図2
図3

その他

  • 研究課題名:微生物を利用した天然高分子資源の環境保全素材への変換
  • 予算区分:経常研究
  • 研究期間:平成8年度(平成6年~8年)
  • 研究担当者:徳安 健、濱松潮香、森 隆
  • 発表論文等:Purification and Characterization of Extracellular Chitin Deacetylase from Colletotrichum lindemuthianum, Biosci. Biotech. Biochem., 60(10), 1996.