コンピューターを用いた16SrRNA塩基配列による乳酸菌同定システム
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要約
16SリボゾームRNAの塩基配列を利用するコンピューター同定システムを開発した。乳酸菌分類基準株の独自データ及び国際データバンクのデータを取りまとめた同定用データベースを構築し,全食品乳酸菌の同定を可能にした。
- 担当:食品総合研究所・応用微生物部・酵母研究室
- 代表連絡先:0298-38-8066
- 部会名:食品
- 専門:微生物・酵素
- 対象:
- 分類:普及
背景
現在,リボゾームRNA(以後rRNAと略記する)の分子進化に基づく細菌の分類研究が盛んに行われ,系統的な分類が可能であることからその分類体系の構築が進められている。また,分類に用いられるrRNA塩基配列情報を利用すれば,未知の細菌の同定・検索の効率化も可能になると考えられる。そこで,本研究では,食品に最も関連の深い細菌のひとつである乳酸菌について,rRNAの塩基配列情報を利用する高精度・迅速な同定・検索方法の開発を試みた。
成果の内容・特徴
- 未知の乳酸菌の簡易・迅速16rDNA塩基配列決定法16SrDNAの30位から300位と1200位から1400位の領域の安定したデータが得られるプライマーや16SrDNA全塩基配列決定用プライマー(図1)の開発と実験工程の機械化を進め,実験者によるデータのフレの少ない塩基配列決定方法を確立した。
- 乳酸菌同定用16SrDNA塩基配列データベース乳酸菌の分類基準株の16SrDNA塩基配列の独自データ,及び国際DNAデータベースのデータをまとめデータベースとした(表1)。このデータベースを用いれば,近縁菌種間の識別(図2)も可能である。
- 同定効率食品から分離される全ての乳酸菌について(1)の方法にて塩基配列を決定し,(2)のデータベースにて検索することにより,菌種の同定が可能になった。従来の同定方法と比較して,菌種レベルの高精度な,また,4~6株について1週間程度と迅速な同定が可能になり同定効率が大きく向上した。また,従来法によれば微生物分類の専門家でなければ同定が極めて困難であったが,本方法では,塩基配列決定のみにより食品から分離される通常の乳酸菌はすべて同定が可能になった。
成果の活用面・留意点
本システムによれば,微生物の専門家でなくとも,塩基配列決定技術を有すれば乳酸菌の同定が可能になる。よって,乳酸菌研究や乳酸菌利用産業の現場で広く利用可能であり,学会誌,業界誌などを通じて普及をはかる。
具体的データ



その他
- 研究課題名:遺伝情報に基づく食品関連細菌の検索法の開発
- 予算区分:経常
- 研究期間:平成9年度(平成3年度~平成9年度)
- 研究担当者:森勝美,島純,中島博文
- 発表論文等:Comparative sequence analyses of the genes coding for 16SrRNA of Lactobacillus casei-related taxa., Int.J.Sys.Bacteriol.,Vol.47, no.1, 1997.
Identification method of lactic acid bacteria in food based on sequences of the 16S rRNA gene., 10th International Biotechnology Symposium Abstract, 1996.
16SリボゾームRNA遺伝子を利用した乳酸菌の同定システム,日本醸造協会誌,92巻, 188-194,1997.
A computer system for identification of lactic acid bacteria of foods, Proceedings of The World Congress on Food Hygiene, p.338, 1997.