薄層クロマトグラフィーの蛍光X線による多元素同時検出

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要約

薄層クロマトグラフィー(TLC)を蛍光X線(XRF)分析顕微鏡と組み合わせた新しい手法TLC/XRFにより,TLCプレート上に展開された成分を,元素を指標にして検出することに成功した。

  • 担当:食品総合研究所・分析評価部・状態分析研究室
  • 代表連絡先:0298-38-8033
  • 部会名:食品
  • 専門:食品品質
  • 対象:
  • 分類:指導

背景

液体クロマトグラフィー(LC)やガスクロマトグラフィー(GC)では,それぞれ,ICP-AES(誘導結合プラズマ発光),AED(原子発光検出)法と組み合わせた,元素を指標とする検出法が汎用されている。それに対し,より簡便で迅速な分離分析法であるTLCでは,多元素同時分析が可能な検出法は未開発であった。試料を大気圧下で二次元的に走査することができ,元素の存在部位を非破壊的に観測できるX線分析顕微鏡を用いた新手法,TLC/XRFの開発を試みた。

成果の内容・特徴

  • 従来,TLCによる金属元素の検出は,各元素に特有な発色試薬と反応させて行われてきたが,TLC/XRFでは,1枚のプレート上で各元素を同時に検出することができる(図1a)。
  • 金属錯体(プロトポルフィリン類)についても,前処理操作なしで,元素の存在と種類が確認できる(図1b)。
  • 図2に,Cl,Br,Iを含む農薬およびその関連化合物(a)と含硫アミノ酸(b)のマッピング像を示した。ハロゲンやイオウなどは,ICP-AESなどの元素検出法による測定が困難とされているが,共有結合を破壊することなく,TLC/XRFで検出できる。
  • 測定に用いるTLCプレートの担体としては,セルロース材が適しているが,試料量が十分ある場合は,シリカゲルや,蛍光剤含有のものでも測定が可能である。
  • マッピング画像を得るためには,最も検出感度のよい鉄でも,1μmol必要である。

成果の活用面・留意点

  • TLC/XRFは大気圧下での測定が可能であるため,高含水量のゲルを用いた平面クロマトグラフィーへの応用も可能である。また,非破壊的な測定法であるので,元素情報入手後,質量分析を行い(TLC/MS),元素を含む分子の質量情報や構造情報も得られる。
  • 問題点としては,検出感度の悪さが挙げられる。特に,分子量の大きな成分を扱う場合,相対的な試料量の増加のためTLCでの分離に支障を来たす。今後,装置面での性能向上により,生体構成成分についての情報も,TLC/XRFから迅速・簡便に取得できると考えられる。

具体的データ

図1 セルロースTLCに展開された金属元素の合成画像
図2 非金属元素のTLC/XRF

その他

  • 研究課題名:半金属を中心とする生体内微量元素と超分子の相互作用の解析
  • 予算区分:科学技術特別研究員
  • 研究期間:平成9年度(平成9~10)
  • 研究担当者:亀山眞由美,永田忠博
  • 発表論文等:永田,亀山,日本分析化学会第46年会 要旨集 P.13(1997.10.8) 亀山,永田,Anal. Chem. 印刷中 (1998)