もち性小麦粉の糊化及び生地特性
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要約
もち性小麦系統の小麦粉アミログラム最高粘度はうるち系統と同程度の値を示すが、フォーリングナンバー値は著しく小さい。ファリノグラムの吸水率、ドウ形成時間、ドウ弱化度は大きい値を示す。
- 担当:食品総合研究所・素材利用部・穀類利用研究室
- 代表連絡先:0298-38-8043
- 部会名:食品
- 専門:食品品質
- 対象:小麦
- 分類:指導
背景
平成7年度に農林水産省で育成に成功した小麦のもち性系統より得られる小麦粉についてアミログラフ、フォーリングナンバーなどの糊化特性試験とファリノグラフによる生地特性試験を行い、その品質特性の特徴を明らかにする。
成果の内容・特徴
- もち性小麦粉のα-アミラーゼ活性はうるち性系統と差が認められず、アミログラム最高粘度は、うるち性系統と同程度の値を示した(図1)。最高粘度時温度はうるち性のもの(88~90°C)より極めて低く64~68°Cであった。最高粘度の低い試料はα-アミラーゼ活性が通常より高く、穂発芽被害を受けたものであったので(図1)、健全な小麦の場合は米とは異なり、もち性系統の最高粘度がうるち性系統と比べて低くなることはないと判断された。
- もち性系統は低温でデンプン粒の糊化崩壊が起こるため、フォーリングナンバー値は、穂発芽によるアミラーゼ活性の上昇があるなしに関わらずうるち系統に比べて著しく小さかった。(図2)
- もち性系統のファリノグラムの吸水率は、いずれも70%を越え、硬質(主として60%台)、軟質(主として50%台)の両うるち系統と比べて大きかった。ファリノグラム図形(図3)はドウ形成時間(DT)が硬質系統的な大きな値を示し、ピーク値から12分後のドウの弱化度(Wk)は、軟質系統的な大きな値を示した。
成果の活用面・留意点
- もち性小麦ではアミログラム最高粘度はうるち性小麦と同程度なので、最高粘度が低いためにアミログラフの利用が困難なもち米とは異なり、アミログラフを糊化特性評価や穂発芽被害の検定に利用することができる。
- もち性小麦のフォーリングナンバー値は試料間の差が検出されないため、糊化特性評価や穂発芽被害粒の検定には適用できない。
- もち性小麦のファリノグラム吸水率は大きい値を示すため、加工時の加水量決定の際には注意を必要とする。
具体的データ



その他
- 研究課題名:めん類へのもち性小麦の利用技術の開発
- 予算区分:経常、総合的開発(新用途畑作物)
- 研究期間:平成8年~12年度
- 研究担当者:金子成延・松倉 潮・門間美千子
- 発表論文等:もち小麦の品質評価、日本食品科学工学会第44回大会講演要旨集(1997年)