麹菌とその近縁菌のリボソームRNA遺伝子の塩基配列に基づく系統解析

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要約

麹菌およびその近縁菌26種のリボソームRNA遺伝子の塩基配列を比較し,その進化系統樹を作成した。

  • 担当:食品総合研究所・応用微生物部・糸状菌研究室
  • 代表連絡先:0298-38-8077
  • 部会名:食品
  • 専門:バイテク
  • 対象:微生物
  • 分類:研究

背景

Aspergillus oryzaeおよびA. sojae等の麹菌は,我が国においては味噌,醤油,酒,食酢等の発酵食品の醸造に使用されている重要な菌である。同時に,麹菌は強力な発ガン物質であるアフラトキシンの生産菌 A. flavus や A. parasiticusと類似の菌である。そこで,麹菌とその近縁菌の遺伝子を調べて,系統進化の位置付けを明らかにすることを目的とし,麹菌とその近縁菌26種26株の18SリボゾームRNA遺伝子(18SrDNA)の塩基配列を調べた。

成果の内容・特徴

  • 麹菌とその近縁種の18SrRNA遺伝子を,特異的なオリゴヌクレオチドプライマーを用いたPCRによって増幅し,その塩基配列をダイデオキシ法によるサイクルシーケンシングにより決定した。
  • 塩基配列の比較および系統樹は,コンピュータプログラムBioresearch Sinka(Fujitsu)を用い,それぞれKimuraの式および近隣結合法(NJ法)によって解析した。
  • A. oryzae,A. flavus, A. sojae,および A. parasiticus の, 18S rDNAの約1,760の塩基配列は同じであった。さらに,麹菌および近縁種26種26株についてその塩基配列に基づく進化系統樹を作成し,麹菌の系統進化の位置を明らかにした(図1)。
  • A. oryzae,A. flavus, A. sojae, A. parasiticus,A. toxicariusおよびA. tamariiの6種12株については,18S rDNAより変異の大きいとされるInternal transcribed spacer (ITS)領域の塩基配列を調べた。その結果,A. oryzae- A.flavus グループ,A. sojae- A. parasiticus- A. toxicariusグループとA. tamariiのグループに大別できることを明らかにした(図2)。

成果の活用面・留意点

従来の分類法に本研究の成果を反映させることにより,新しい分類・同定法の開発が期待される。

具体的データ

図1
図2

その他

  • 研究課題名:麹菌の遺伝的特性の解明
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成9年度(平成6~9年度)
  • 研究担当者:新國佐幸*,鈴木チセ,柏木豊(*現・国際農林水産業研究センター)
  • 発表論文等:新國佐幸,保科真一,中島博文,大野正博,鈴木チセ,森勝美:麹菌とその近縁菌の18S rRNA 遺伝子およびITS領域の塩基配列. , 1997年度日本農芸化学会大会講演要旨,p.213, 1997.4.2
                      S. Nikkuni, H. Nakajima, S. Hoshina, M. Ohno, C. Suzuki, Y. Kashiwagi and K. Mori, Evolutionary relationship among Aspergillus oryzae and related species based on the sequences of 18S rRNA genes and internal transcribed spacers , J. Gen. Appl. Microbiol., submitted.