枯草菌の胞子形成制御遺伝子の探索

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

枯草菌の胞子形成を制御する遺伝子を探索するため、まず胞子形成誘発期に特異的に現れる蛋白質を見つけて、この蛋白質のコード遺伝子をクローン化した。spo32と名付けたこの遺伝子は、シグマHの支配下にあり、遺伝子破壊を行うと、胞子形成能は1/4~1/40に低下した。

  • 担当:食品総合研究所・生物機能開発部・微生物機能工学研究室
  • 代表連絡先:0298-38-8125
  • 部会名:食品
  • 専門:バイテク
  • 対象:微生物
  • 分類:研究

背景

枯草菌は土壌細菌の一種であるが、納豆菌を含むように、食品とも密接に関連した微生物である。本菌の酵素生産(プロテアーゼ、アミラーゼなど)と抗生物質生産を初めとする緒々の機能は、胞子形成能と密に連関していることは以前からよく知られている。そこで胞子形成能に異常を生じた変異株を作成することにより、代謝能に与える効果を研究した。

成果の内容・特徴

  • 胞子形成期に特異的に出現する32kDaの蛋白質が存在することを見出した。
  • 種々の方法を組み合わせることにより、32kDa蛋白質を単離し、アミノ酸シーケンサーによりその30残基を決定した。
  • その情報に基づき、遺伝子のクローン化に成功した。
  • 遺伝子解析の結果、本遺伝子はシグマHの支配下にあると思われる。(図1および図2参照)。
  • 本遺伝子の破壊は、生育に影響を与えないが、胞子形成能は1/4~1/40に低下する。抗生物質生産は影響を受けない。

成果の活用面・留意点

  • 電子顕微鏡観察の結果から、この遺伝子は胞子形成の最も初期の段階、すなわちステージ0で関与することが判りつつある。
  • 従って本遺伝子は、新たなspoO遺伝子に該当すると推定できる。
  • 1,2の推定が妥当ならば、物質生産との関係を究明する際のよい対象となることが期待される。

具体的データ

図1
図2

その他

  • 研究課題名:細胞の特異機能発現における情報認識と伝達機構の解明
  • 予算区分:重点基礎
  • 研究期間:平成9年度(単年度)
  • 研究担当者:越智幸三、川本伸一
  • 発表論文等:Han W-D. , S. Kawamoto, Y. Hosoya and K. Ochi ; Gene (in submition).