新定着貯穀害虫ガイマイツヅリガの分布拡大に関する特性

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

熱帯地域などで主に精米の害虫であるガイマイツヅリガは、気温15°C以上で玄米を餌としても発育した。また消化酵素の活性比較試験からも広範囲の食性を持つ可能性が示された。これらから定着が確認されている沖縄以外への分布拡大が懸念される。

  • 担当:食品総合研究所・流通保全部・貯蔵害虫研究室
  • 代表連絡先:0298-38-8081
  • 部会名:食品
  • 専門:食品品質
  • 対象:昆虫
  • 分類:行政

背景

ガイマイツヅリガ(Corcyra cephalonica、図1)は、熱帯から亜熱帯地域にかけての重要な貯穀害虫であり、米(特に精米)を中心とした農産物および加工食品などでの被害が大きい。近年まで日本国内には分布していないとされていたが、最近沖縄県で定着が確認され、今後、国内各地への分布拡大が懸念される。その可能性を検討するため、沖縄県で採集後、実験室内で累代飼育している系統を用いて、発育・繁殖条件ならびに食性に関する調査を行った。

成果の内容・特徴

  • 発育および繁殖に必要な温度を検討するため、10°Cから30°Cまでの7段階の温度区(70~90%RH)で玄米を餌として幼虫を飼育した(表1)。30°C、25°Cおよび20°Cでは発育・繁殖が活発であったが、温度の低下に伴い発育期間が長くなった。17.5°Cでは、羽化は可能であったがほとんど産卵出来なかった。15°Cでは、孵化から150日以上経過しても羽化が見られず、12.5°C以下では発育不能であった。
  • 異なる形態の米に対する加害能力を検討するため、玄米(粒・粉)、精米(粒・粉)およびぬかを餌として幼虫を飼育した(表2)。精米粉でやや発育が遅れたが、その他の餌では発育・繁殖ともに良好であった。玄米であっても精米と変わらず発育できることから玄米で流通しているわが国では本種の被害と九州以北への分布拡大が予測される。
  • 同じ鱗翅目の貯穀害虫で食性が異なるとされるノシメマダラメイガと消化酵素活性を比較するために、幼虫の中腸を取り出し、アミラーゼおよびプロテアーゼを調査した(図2)。ガイマイツヅリガのアミラーゼは、ノシメマダラメイガの約2倍(30°C、pH10)、プロテアーゼは1.6倍(30°C、pH12)の活性を示した。本種は米ではぬか層のみを摂食するノシメマダラメイガより広範囲の食性を持つ可能性が示された。

成果の活用面・留意点

沖縄を除いて国内未定着害虫であるガイマイツヅリガの生理的、生態的特徴を明らかにすることで国内各地への分布拡大の可能性を探り、防除対策に活用する。

具体的データ

図1 ガイマイツヅリガ成虫
図2
表1
表2

その他

  • 研究課題名:新定着害虫ガイマイツヅリガの分布拡大の可能性の検討
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成9年度(平成8年~9年)
  • 研究担当者:宗田奈保子・中北 宏
  • 発表論文等:ガイマイツヅリガの米への加害特性について。第41回日本応用動物昆虫学会、平成9年