血液レオロジー計測装置MC-FANによる食品機能性の迅速・定量評価
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要約
赤血球変形能・白血球粘着能・血小板凝集能を信頼性・再現性・定量性高く測定できるMC-FAN(MicroChannel array Flow ANalyzer)が開発され、それを用いて様々な食品の機能性を迅速かつ定量的に評価できる。
- 担当:食品総合研究所・食品工学部・上席研究官
- 代表連絡先:0298-38-8021
- 部会名:食品
- 専門:食品品質
- 対象:
- 分類:普及
背景
食品の機能性を迅速かつ定量的に評価する目的で、組織の活動の基になる微小循環血流量を左右する諸因子に対する信頼性・再現性・定量性の高い計測法の開発を目指した。半導体微細加工技術を用いることでシリコン単結晶基板にミクロンサイズの微細な溝のアレイをサブミクロン精度で加工できる。光学研磨したガラス基板で覆うことにより溝のアレイを微細流路のアレイ(マイクロチャネルアレイ)に変換できれば、流路を流れる血液細胞の挙動を顕微鏡観察しながら、一定圧力差の下で全流路を通過する血液流量を測定しえる。この方法で課題であった信頼性・再現性・定量性を達成しえると考えた。
成果の内容・特徴
- サブミクロン精度で加工したミクロンサイズのマイクロチャネルアレイに気泡の障害を防いで血液試料を安定に流す技術、さらに完全に洗浄する技術を開発し、顕微鏡観察下にチャネル通過時間・閉塞率・再開通率から赤血球変形能、白血球粘着能、血小板凝集能を信頼性・再現性・定量性高く測定できる装置MC-FAN(MicroChannel array Flow ANalyzer;図1)を完成した。
- 赤血球変形能、白血球粘着能、血小板凝集能さらにそれらの総合的な影響を示す全血流動性に著しい個人差があることを見出した(図2)。
- くろず中に赤血球変形能を改善する物質および白血球粘着能を抑制する物質を見出し、後者がヒスタミンであることを明らかにした。
- 梅肉エキスおよび黒豆煮汁中に血小板凝集能を抑制する物質が存在することを見出し、梅肉エキス中の血小板凝集能抑制物質がクエン酸および製造工程(加熱)中に生じる新規物質(ムメフラールと命名)(図3)であることを明らかにした。
- 流路を通過中の白血球が産生する活性酸素量をルミノール増感発光として測定できることを示した。
- LPS暴露白血球が産生する活性酸素量に著しい個人差があることを見出した。
- 情報の交換のためMC-FANのユーザーを中心とした研究会(ヘモレオロジー研究会)を組織した。
成果の活用面・留意点
MC-FANは健康の評価、疾患の診断、薬品の効果の評価、食品の健全性・機能性の評価に極めて有用であると思われる。大学、病院、製薬会社、食品会社への普及を目指したい。
具体的データ
その他
- 研究課題名:微小循環モデルを用いた血液レオロジー計測法の開発
- 予算区分:一般別枠
- 研究期間:平成10年度(平成5~10年度)
- 研究担当者:菊池佑二
- 発表論文等:1)H.E.Kikuchi, Y.Kikuchi, Measurement of rheology and oxyradicals by microchannel array flow analyzer for leukocytes in whole blood exposed to bacterial cells and lipopolysaccharides, Microcirculation annual, 14, 41-42, 1998.
2)Y.Kikuchi, H.E. Kikuchi, Visual measurement of rheology and oxyradicals for leukocytes in whole blood exposed to bacterial cells and LPS using micromachined channel arrays, 20th European Conference on Microcirculation, 151-155, 1998.
3)菊池佑二、毛細血管モデルを用いた血液レオロジー計測、化学工学、62、136-138、1998.
4)菊池佑二・門馬正人・牧野鉄也・田村正孝、細胞マイクロレオロジー測定装置MC-FAN、細胞、30(7)、281-284、1998.
5)山岸賢治・木村俊之・亀山眞由美・永田忠博・菊池佑二、黒酢中に含まれる血流改善成分の精製及び構造解析、日本食品科学工学会誌、45(9)、545-549、1998.
6)菊池佑二・岡崎和伸、MC-FANによる全血通過時間の測定と健常者におけるその分布、ヘモレオロジー研究会誌、1、53-57、1998.
7)岡崎和伸・浅野勝己・菊池佑二、持久性運動トレーニングの全血流動性に及ぼす影響、ヘモレオロジー研究会誌、1、59-64、1998.
8)忠田吉弘・小野裕嗣・亀山眞由美・永田忠博・菊池佑二、梅肉エキス中の血流改善成分、ヘモレオロジー研究会誌、1、65-68、1998.
9)菊池佑二・萩原昌司・菊池裕子・曲山幸生・大谷敏郎、マイクロチャネルアレイにトラップされた白血球からのルミノール依存性発光の測定、ヘモレオロジー研究会誌、1、79-85、1998.