分光イメージングによるメロンの糖度分布の可視化

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要約

メロン果肉の糖度変化と相関の強い吸収波長を見いだし、その波長の干渉フィルターを付けた冷却CCDカメラにより、各ピクセル毎に近赤外分光法にもとづく糖度推定を行い、その結果をカラーマッピングすることにより糖度の分布が可視化できる。

  • 担当:食品総合研究所・流通保全部・放射線利用研究室
  • 代表連絡先:0298-38-8047
  • 部会名:食品
  • 専門:食品品質
  • 対象:メロン
  • 分類:指導

背景

近年、桃、リンゴやメロン等の糖度を光によって非破壊測定して、選別する技術(近赤外分光法)が実用化され、全国の選果場に普及しつつあるが、一方で、測る場所によって糖度のバラツキがあることも指摘されている。また、糖の蓄積過程が明らかになれば、新たな品質向上への取り組みも期待できる。そこで、これまでポイント測定であった近赤外分光法を、冷却CCDカメラを用いた2次元画像測定に拡張し、各ピクセル毎に近赤外分光法にもとずく糖度推定を行い、メロン果実断面の糖の分布の可視化を試みた。

成果の内容・特徴

  • 可視化手順は以下の通りである。
    1)メロンの赤道部からφ20mmの円柱状に果肉を切り出し、内側果肉表面の相互拡散スペクトルを近赤外分光装置により400~1100nmの範囲で測定し 糖度と相関がある吸収波長を調べる。その結果、676nmで最大の相関(但し、逆相関なので、糖と関連の深い代謝物またはクロロフィルの吸収)を示した。
    2)図1の装置により、1)で確認した676nmにおける分光画像を取得する。
    3)取得した画像のノイズ除去、感度・照明ムラの補正をする。
    4)各画素の輝度値を吸光度に変換。[輝度画像→吸光度画像への変換]
    5)図1の分光イメージング装置における吸光度-糖度の検量線を算出する。(図2)
    6)4)の画像を5)の検量線により、各画素ごとに糖度を算出する。[吸光度画像→糖度画像への変換]
    7)6)の糖度画像をリニアーカラースケールでマッピングする。(図3)
  • 可視化した画像から、日を追う毎にメロン内側に糖が蓄積していくのがわかる。
  • 適熟果、完熟果においては、場所によってかなり糖度が異なっていた。また、どの場合も底部より頭部の方が糖度が高い部分があった。糖の分布パターンは新しい評価基準となる可能性がある。

成果の活用面・留意点

  • 上記データは、緑色果肉系のメロン(アンデス、アールス)においてであり、赤色果肉系のメロンは糖度と相関の高い吸収波長を再確認する必要がある。
  • 今回は、分光画像を取得してから、同一試料を用いて検量線を算出し、マッピングしたが、この検量線を他試料のマッピングに適用する場合は、あらかじめ精度の評価をする必要がある。
  • メロン糖度においては、単回帰式で十分な相関が得られたが、試料や目的成分によっては複数波長による重回帰式の適用が必要である。

具体的データ

図1 分光イメージング装置
図2 精度と吸光度の検量線
図3

その他

  • 研究課題名:ID付与による仮想農産物の構築に関する研究
  • 予算区分:一般別枠(増殖情報)
  • 研究期間:平成10年度(平成9~14年)
  • 研究担当者:杉山純一
  • 発表論文等:1)J.Sugiyama,"Visualization of Sugar Content in Flesh of a Melon by NIR Imaging", J.Agr.Food.Chem. vol,47,n07(1999). 投稿中
                      2)杉山純一、“近赤外イメージングによるメロンの糖度分布の可視化”,農業機械学会講演要旨集(1999年).