ゴマリグナンの脂質代謝改善作用

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要約

ゴマリグナンであるセサミンはラット肝臓の脂肪酸酸化系酵素の活性を大きく上昇させ、反対に脂肪酸合成系酵素活性を低下させた。酵素のmRNAレベルにも同様な変化が観察された。肝臓脂肪酸代謝系の変化がセサミンの血清脂質低下作用に関与すると思われる。

  • 担当:食品総合研究所・食品機能部・栄養化学研究室
  • 代表連絡先:0298-38-8083
  • 部会名:食品
  • 専門:食品品質
  • 対象:ゴマ
  • 分類:研究

背景

ゴマに含まれるリグナン化合物であるセサミンには血清脂質低下作用が報告されている。この脂質代謝改善作用の発現機構を明らかにするためにセサミンの投与がラット肝臓の脂肪酸代謝系酵素の活性とmRNAレベルに与える影響を調べた。

成果の内容・特徴

  • 15%のサフラワー油あるいはパーム油を脂肪源とする飼料に0.2%レベルで添加したセサミンは血清の脂質濃度(トリグリセリド、コレステロール、リン脂質および遊離脂肪酸)を低下させた(表1)。
  • セサミンは肝臓ミトコンドリアβ酸化活性を約1.7倍に、ペルオキシゾームβ酸化活性を3~4倍に上昇させた(図1)。また、セサミンはβ酸化系の種々の酵素活性を大きく上昇させた。
  • セサミンはミトコンドリア短鎖エノイル-CoA水和酵素を除く、ミトコンドリアおよびペルオキシゾームのβ酸化系酵素のmRNAレベルを大きく上昇させた(表2)。なお、β酸化系酵素の活性と遺伝子発現のセサミンに対する応答は食餌油脂の違いにより影響されなかった。
  • セサミン無添加食群において、脂肪酸合成系酵素(脂肪酸合成酵素、ピルビン酸キナーゼ、リンゴ酸酵素、グルコース6-リン酸脱水素酵素)の活性とmRNA量はサフラワー油食群でパーム油群より低かった。セサミン添加は両脂肪食群においてリンゴ酸酵素を除く酵素活性および脂肪酸合成酵素とピルビン酸キナーゼmRNA量を低下させた(図2)。

成果の活用面・留意点

セサミンの血清脂質低下作用がラット肝臓の脂肪酸代謝変化に基づくことを初めて明らかにした。この知見はゴマを活用した、機能性食品の開発に活用できるものである。

具体的データ

図1
図2
表1
表2

その他

  • 研究課題名:食品成分の脂質代謝改善能とその分子機構の解明
  • 予算区分:大型別枠
  • 研究期間:平成10年度(平成10~12年)
  • 研究担当者:井手隆
  • 発表論文等:1)Reciprocal response by sesamin of the gene expression and activity of enzymes in fatty acid oxidation and synthesis in rat liver、第52回日本栄養・食糧学会 講演要旨集 p. 90 (1998).
                      2)食品成分による肝臓脂肪酸代謝系酵素の制御 第52回日本栄養・食糧学会 講演要旨集p. 52 (1998).
                      3)セサミンがラット肝臓の脂肪酸酸化と脂肪酸合成系酵素の活性および遺伝子発現に与える影響" 日本農芸化学会1999年度大会発表予定