ダイズ貯蔵タンパク質遺伝子の適切な発現に必要な3'下流域配列

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要約

ダイズ種子貯蔵タンパク質(グリシニンA2B1aサブユニット)遺伝子の種子での高発現に必要なその3’下流域配列の長さを同定した。組み換えタバコ植物体をもちいた系での解析の結果、polyA付加部位より下流180bpまでの配列が必要であることを立証した。

  • 担当:食品総合研究所・生物機能開発部・上席研究官室
  • 代表連絡先:0298-38-8137
  • 部会名:食品
  • 専門:バイテク
  • 対象:ダイズ
  • 分類:研究

背景

組み換えタンパク質の大量発現は、大腸菌を初め、酵母、昆虫細胞などのおおくの細胞をホストとして試みられている。植物細胞および植物体を宿主とした系についても報告は多いが、発現量は未だ低く、実用的でない。しかし、培養槽や高価な培地を必要としない点や、目的産物の回収の容易さなどを考えると、ダイズの種子貯蔵タンパク質の発現系が組み換えタンパク質発現に利用できれば、もたらされる効用は絶大で、分子農業という新しい産業を生み出す可能性がある。これを達成するために、まず、貯蔵タンパク質のように大量に発現している遺伝子の転写制御を明らかにすると共に、大量発現に必要なシス因子同定することが重要である。すなわち、植物高発現ベクターの開発を目的とする。

成果の内容・特徴

  • ダイズグリシニンA2B1aサブユニット遺伝子3’下流域の配列1.3kbpを決定した。
  • 3’下流域配列の6段階の欠損系列を作製し、グリシニンプロモーター支配下のレポーター遺伝子直下にこれらを繋げた、植物種子発現ベクターを構築した。
  • リーフデイスク法により、タバコ形質転換体を育成・開花・結実させて、完熟種子でのレポーター酵素の活性を測定した。polyA付加部位より下流180bpがあれば、この酵素の安定な発現に十分であることがわかった。
  • 当研究室ですでに明らかにした5’上流域の必要な配列と3’下流域配列を使った、植物種子高発現ベクターの開発ができたことになる。(図)

成果の活用面・留意点

研究成果は学術雑誌に投稿する予定。ダイズ貯蔵タンパク質グリシニン遺伝子の種子での大量発現に必要な5’および3’下流域の配列が同定されたので、目的遺伝子をこれらの配列に挟み込むことで、植物種子高発現ベクターが構築できる。

具体的データ

図

その他

  • 研究課題名:ダイズ貯蔵タンパク質(グリシニンA2B1aサブユニット)の発現機構の解析
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成10年度(平成7~10年)
  • 研究担当者:木村啓太郎・深澤親房