易分解性糖質回収のための稲わら稈部分離技術の開発

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

稲わら稈部を葉鞘や葉身と分けて回収するため、両者の物理的性質の差を利用した分離技術を開発する。稲わらを粉砕後に両者を風力で分離した場合、稲わら(ミルキークイーン)裁断物からの易分解性糖質回収率は、稈部に含まれる量の約80%となる。

  • キーワード:稲わら、易分解性糖質、稈、分離技術、バイオエタノール
  • 担当:食総研・糖質素材ユニット
  • 代表連絡先:電話029-838-7189
  • 区分:バイオマス
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

収穫時に回収される稲わらには、シュークロース、でん粉などの易分解性糖質が蓄積しており、その大部分が稈部に存在する。この稈部をバイオエタノール原料として用いる場合、高濃度の糖化液やエタノール発酵液が得られ、蒸留コストや環境負荷を低減できると期待される。そこで、本研究では、稲わら粉砕物から稈部のみを分離・回収するための技術を開発する。

成果の内容・特徴

  • 稲わら(ミルキークイーン)をローラーで圧縮して潰した後、稈に対して長さ3 cm間隔で裁断する。これをグラインダーで粉砕した後、上部開方式円筒管に入れ、下から空気を回転させて吹き上げる(図1)。円筒管上部から飛ばされた破砕物を低比重部、円筒管内に残った粉砕物を高比重部として回収する。低比重部および高比重部の回収量は、手作業で分離した葉鞘・葉身部の量および稈部の量とほぼ同じ値を示す(図2)。
  • 低比重部および高比重部を0.5 mm以下に粉砕し、易分解性糖質を定量する。対照群として、手作業で分離した稈部、葉鞘・葉身部および稲わら全体を粉砕した試料についても定量を行う。その結果、高比重部に存在する易分解性糖質は、手作業で分離した稈部に含まれる易分解性糖質の約80%相当となる(図3)。本分離技術は、コシヒカリ、夢あおば由来の稲わらについても適用可能である。

成果の活用面・留意点

  • 稈と葉鞘・葉身部の分離効率は、稲わらの品種、粉砕物の形状、水分含量等により影響を受ける。本分離技術は、一定品質の稲わらの分離に対して有効であるが、原料特性の変化に対応して風量等の条件を修正し最適化させる必要がある。
  • 選別された稈部は糖濃度が高いことからバイオエタノール変換工程が効率化するが、乾燥・輸送コストについては、分離コストや必要収集量の増加等を考慮した総合的評価が必要となる。
  • 稈部を圃場またはその近辺で分離できれば、副産物となる葉鞘・葉身部を鍬込みまたは燃料用途等に供すことにより、稲わらの部位特性に応じた有効利用が可能となる。

具体的データ

図1 稲わら粉砕物の風力選別技術

図2 稲わらの手作業分離(左)による稈および葉鞘・葉身の乾重比と機械分離(右)による高比重部および低比重部の乾重比(手分離:100g、機械分離:30 gを用いた結果)

図3 稲わらの各分離法により得られる画分における易分解性糖質の組成比(対乾燥重量)

その他

  • 研究課題名:リグノセルロースの酵素分解技術の開発
  • 課題ID:224-b
  • 予算区分:委託プロ(バイオマス)
  • 研究期間:平成19年度~平成20年度
  • 研究担当者:徳安 健(食総研)、荒金光弘(食総研)、朴正一(食総研)
  • 発表論文等:特許出願「稲の糖化法」特願2008-198418