低温製粉全粒そば粉を用いた十割そば用の卓上型機械製麺システムの開発

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要約

低温製粉全粒そば粉を利用して、十割そばが簡便にできる卓上型の機械製麺システムを開発した。本システムは、500gのそば粉の水回しと捏ねが約2分で完了するハイブリッドミキサーと、2段階の「のし」とロールカッターによる「麺切り」機能を備えた複合型製麺装置で構成され,全工程10分以内で約5人分の「水ごね十割そば」を製造できる。本システムの利用により、農産物直売場などでも大人数の観光客等に十割そばを提供することができ、地域産業の振興に利用できる。

  • キーワード:そば、製粉、製麺、十割そば
  • 担当:食総研・食品工学研究領域
  • 代表連絡先:電話029-838-8014
  • 区分:食品試験研究
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

国産そばの高品質化を目指して、各地でそばの新品種が開発されている。地域特産のそばを原料として、高品質な「水ごね十割そば」を製造、販売できるように,小型で簡便な十割そばの機械製麺システムを開発する。収益の向上が困難な玄そばの販売から高品質な十割そばの製造、販売への転換により、農業生産者等の経営改善が期待できる。

成果の内容・特徴

  • 十割そば製造熟練者が行う「水回し」工程を解析して、プロペラ型とピン型の撹拌および混捏機能を有するハイブリッド型のそば用ミキサーを新たに開発した(図1)。
  • ハイブリッドミキサーに500gの低温製粉全粒そば粉と約45%の水を加えて撹拌すると2分間で十割そばの生地玉を製造できる(図2)。
  • 複合型製麺装置は、麺帯ロール部の間隙をレバーで切り替えることにより、太麺と細麺の2種類の十割そばを製造でき、両者の販売体制を作ることが可能である(図3)。
  • 生産者団体の直売場における「十割そば」の試験販売等、そばを活用した地域食品産業の振興に利用できる。

成果の活用面・留意点

  • 本製麺システムでは食感の異なる太麺と細麺の2種類の十割そばを製造できる。太麺と細麺の嗜好性が半々であるため、両者の販売体制を作ることが望ましい。
  • 風味の良い「十割そば」を販売するために、原料となる玄そばの適期収穫と低温通風乾燥を行うことが望ましい。「十割そば」に玄そばの果皮が混入すると麺が切れやすいため、そば丸抜きに果皮が混入しないように精選する必要がある。
  • 高温時の玄そばの品質劣化を避けるためには、玄そばを低温貯蔵(4°C)することが望ましい。
  • 製粉したそば全粒粉は、脂質を含むため酸敗臭が発生しやすい。風味の良い十割そばを販売するために、必要な量のそば粉を製造して使い切ることが望ましい。そば全粒粉を長期間保存する場合は、酸化防止のために脱酸素材を用いて冷凍貯蔵(-20°C)するのが望ましい。

具体的データ

図1.ハイブリッドミキサーハイブリッドミキサー内部の攪拌子(赤枠内)により粉と水が均一分散する。そぼろが徐々に大きくなり、雪だるまのように周囲に生地が張り付いて生地玉を形成する( 右図) 。

図2.ハイブリッドミキサーによる水回し工程のMRI 画像MRI画像では、水は赤色、水の回っていないそば粉は青色、生地は中間色で表示される。水は、1分後にほぼ均一分散し、2分後に生地玉が形成される。

図3.複合型製麺装置と機械製麺システムで製造された十割そば複合型製麺装置(左図)を用いると、5人前(そば粉500g)の麺線を2~3分で製造できる。十割そばは、茹で時間が短い(約30秒)ため、5人分の「水ごね十割そば」を全工程10分以内で製造できる(右図)。

その他

  • 研究課題名:ナノスケ-ル加工の臼式製粉技術による穀類等の低温超微粉砕化技術の開発
  • 課題ID:313-d
  • 予算区分:委託プロ(食品ナノ)
  • 研究期間:2006~2010年度
  • 研究担当者:北村義明、堀金彰
  • 発表論文等:なし