二方向引っ張り試験による業務用カットキャベツの加工適性評価
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要約
キャベツの葉の葉脈に対し平行及び垂直方向への引っ張り破壊試験結果を主成分分析することにより、カットキャベツの力学的特徴を示すことができる。カット用キャベツの新しい適性評価法として活用する。
- キーワード:キャベツ、業務加工、力学特性、加工適性、評価法
- 担当:食総研・食品機能研究領域・食品物性ユニット
- 代表連絡先:電話029-838-8031
- 区分:食品試験研究
- 分類:研究・普及
背景・ねらい
近年ニーズが増えている業務加工用キャベツの力学特性について、品種、栽培条件、貯蔵条件等の影響を明らかにする。とくに、同時入手が困難な試料間についても客観的に比較し、国産キャベツの中からカットキャベツへの加工適性に優れるものを選定するため、機器による力学特性評価法を開発する。
成果の内容・特徴
- キャベツの外側から数えて第五葉を用い、第二葉脈に対し平行と直交方向に短冊状(10mm×60mm)の試料片をそれぞれ10片程度調製する(図1左)。この試験片は、カットキャベツのモデルである。
- 試料片の上下25mm部分をチャックで挟み、毎分250mmの等速で引っ張り、破壊するまでの荷重値を測定する(図1右)。
- 第二葉脈に直交方向に引っ張ると、薄い葉肉部分が破壊される。この破壊力は、従来行われていた葉の貫入破壊試験結果とよく相関する(図2)。
- 一方、第二葉脈に平行方向に引っ張ると、噛みごたえや筋っぽさ等と関係する葉脈を含む部位の破壊特性が評価できる。図3のように、平行方向の引張試験で得られる葉脈の力学特性は、直交方向の試験で得られる葉肉部よりも強度が高い。したがって、互いに相関しない両方向の試験結果を用いると、カットキャベツの力学特性をよりよく表現することができる。
- 平行と直交の二方向の、破壊断面の厚さ、破壊歪、破壊荷重、破壊応力、弾性率という計10変数を用いて、主成分分析を行う。単独変数では説明できなかった試料の力学的な特徴が明らかにできる。
- 一例として、カット加工用キャベツが不足する4~5月に、神奈川県で収穫された品種の比較を示す(図4)。5月に収穫できる寒玉キャベツは、4月収穫の寒玉よりも中間系・春系により近い特徴を示す。5月収穫の遺伝的に中間系の品種は、春系に近い品種と寒玉に近い品種に二分される。
成果の活用面・留意点
- 本手法は、野菜試験研究者あるいは加工業者が、品種、栽培法、球の大きさや密度、貯蔵条件、収穫時期等が異なるキャベツの加工適性評価に使えるほか、レタス等の他の葉菜類にも応用可能である。
- 本研究では加工業者の好む力学特性を指標としたため、消費者の好む栄養成分や味質については、別観点からの評価が必要である。主成分分析は、力学特性のみならず、化学成分値や官能評価点を加えた解析にも容易に応用できる。
具体的データ




その他
- 研究課題名:高性能機器及び生体情報等を活用した食品評価技術の開発
- 課題ID:313-f
- 予算区分:農水省委託(加工プロI系)
- 研究期間:2006~2008年度
- 研究担当者:神山かおる、早川文代
- 発表論文等:1) Kohyama et al. (2008) Food Sci. Technol. Res. 14(4):337-344
2) Kohyama et al. (2008) Food Sci. Technol. Res. 14(6):541-546
3) Kohyama et al. (2009) Food Sci. Technol. Res. 15(1):11-18