迅速多重検出キットの実用化

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要約

サルモネラ・リステリアモノサイトゲネス・腸管出血性大腸菌O157の同時検出法をキット化し技術普及を目指した。多くの食品製造現場での簡易・迅速な自主衛生管理手法としての活用や食中毒事故原因菌特定などへの活用が期待できる。

  • キーワード:食中毒菌、迅速検査キット、サルモネラ、リステリア、大腸菌O157
  • 担当:食総研・食品安全研究領域・食品衛生ユニット
  • 代表連絡先:電話029-838-8067
  • 区分:食品試験研究
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

サルモネラ・リステリアモノサイトゲネス・腸管出血性大腸菌O157は死亡例を含む重篤の患者が認められる食中毒原因菌であり、発生事例も多いことから食品製造現場で恐れられている。しかし、一般に食中毒菌の検査には熟練した技術と、4日以上という多大な時間と労力を要する。これらの食中毒菌の検査を簡易迅速化するため、当ユニットでは遺伝子手法による検査法を開発し、2005年に論文で報告した。この開発手法の実用化と普及を目的として検出キットと検出プロトコールを作製し、多種の食品での接種試験、冷凍保存検体からの回収試験および市販食品による従来法(公定法)との検出率との比較検討を行い、本キットの有効性を評価した。さらに他研究室との室間共同試験で、検出結果の比較検討を行った。

成果の内容・特徴

  • 2005年に報告した論文を基に、本技術の実用化と普及に必要な検出キットを試作した。試作キットの検出感度や保存試験のスペックなどを評価したところ、論文で報告した感度を十分に保ち、6ヶ月間保存したキットを用いても正常に使用できることを確認した。
  • 試作キットを用いて、多種の食品における接種試験を試みたところ、50種類以上の食材において従来法と同等な検出結果を得た。
  • 接種後に凍結保存した検体において従来法と本法を比較したところ、従来法と同等以上の検出感度を示した。(表1)
  • 本キットの性能評価試験を食品企業3社に依頼して室間共同試験を行ったところ、提示したプロトコールにより各研究室でも検出が可能であり、検出感度も一致した。
  • 最終的に本キットは「TA10 Broth」「DNA Extraction Kit TA10」「Pathogenic Bacterial Multiplex PCR Detection Kit TA10」として製品化されるに至った。(写真1)

成果の活用面・留意点

  • 本検出法をキットとして供給でき、実用性の評価を行ったことから、本遺伝子検出法の技術普及に貢献できる。
  • 多くの食品製造現場での簡易・迅速な自主衛生管理手法としての活用や食中毒事故発生の際の原因菌特定のための検査への活用が期待できる。
  • 多数の食材において概ね良好な結果が得られており、本キットの適応範囲は幅広いと考えられるが、自社の製品などにおいて、あらかじめ接種試験などの予備試験を行うことが望ましい。

具体的データ

表1. 2ヶ月凍結検体からの回収試験結果.

写真1. 販売されている検出キット「TA10」(多重)シリーズ.

その他

  • 研究課題名:危害要因の簡易・迅速・高感度検出技術の開発
  • 課題ID:321-a
  • 予算区分:委託プロ(生産工程)
  • 研究期間:2005~2008年度
  • 研究担当者:川崎 晋、川本 伸一
  • 発表論文等:川崎ら「微生物の多重検出方法」,特願2005-516640.
                       Kawasaki, S. et al.(2005) J. Food Prot., 68, 551-556.
                       Kawasaki, S. et al.(2009) Foodborne Pathogens and Disease., 6, 81-89.