精米中の無機元素測定のための誘導結合プラズマ発光分析法の妥当性確認

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要約

精米中の無機元素の定量法として、誘導結合プラズマ発光分析法の妥当性を試験室間共同試験によって確認した。6試料中のカリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、マンガン、銅、リンの7元素を測定した結果、それらのHorRat値は全て1.5以下であり、本測定法による精米中の7元素の定量法は十分な試験室間再現精度を有する測定法である。

  • キーワード:無機元素、試験室間共同試験、誘導結合プラズマ分析、精米
  • 担当:食総研・食品分析研究領域・分析ユニット
  • 代表連絡先:電話029-838-8059
  • 区分:食品試験研究
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

食品中の主な元素類(カリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、リンなど)の日本での公定的な分析法は、個々の元素を単独で測定する必要がある原子吸光分析法や吸光度法である。そこで、多元素を同時に測定できる誘導結合プラズマ発光分析法(ICP-OES法と略す)が、食品中の元素類の測定法として再現精度が高く、多くの試験室で適用可能な分析法であることを示し、日本での公定分析法の一つとすることを目標に、同一試料を使った試験室間共同試験による妥当性確認を行った。

成果の内容・特徴

  • 均質性を統計的に確認した6点の粉砕精米を非明示反復試料として8試験室に配付し、プロトコール[試料調製は0.5g以上の配付試料を用い、その調製方法を報告。同一のICP-OES装置を用い、分析対象元素の検量線の作成と試料の測定は続けて行い(同一の校正)、その機種名を報告。測定は各試料に付き一回だけ行い、水分補正しない生データを報告。測定元素はカリウム、カルシウム、マグネシウムは必須、その他の元素は任意で報告。]に従って測定させた(表1)。回収した6試料の元素ごとにコクラン検定とグラッブス検定を行い、外れ値がある場合には棄却した。それらのデータを統計解析し、併行標準偏差(Sr)や室間再現標準偏差(SR)、併行相対標準偏差(RSDr)、室間相対標準偏差(RSDR)を計算した。さらに、多くの試験室間共同試験で得られたRSDRから導き出された推定RSDR(PRSDR)を使い、 HorRat値(RSDR/PRSDR)を求めた。
  • 各元素の測定値は試験室間で±10%以上の誤差があるものもあったが(表1、図1)、統計的に棄却されたのはカルシウム3試料とマンガン1試料の各1試験室ずつで、全てコクラン検定によるものだった(表2)。解析の結果、カリウム、マグネシウム及びカルシウムのRSDrとRSDRは、それぞれ1.03~1.86%と5.08~6.93%、1.87~6.14%と7.02~9.99%、及び1.27~5.93%と3.40~6.46%、HorRat値は、それぞれ0.89~1.13、1.06~1.44、及び0.38~0.70の範囲であった。また、亜鉛、マンガン、銅及びリンのRSDrとRSDRは、それぞれ1.21~4.15%と3.53~5.62%、1.06~6.84%と3.49~7.57%、3.23~20.9%と6.11~23.3%及び0.79~1.79%と6.55~7.85%、HorRat値は、それぞれ0.32~0.54、0.30~0.65、0.41~1.49及び1.18~1.43の範囲であった(表2)。
  • 7元素のHorRat値は全て1.5以下となり、さらにそれらのRSDrとRSDRから、今回の試験室間共同試験の測定結果が満足なものであり、ICP-OES法による精米中の無機元素類の定量法が十分な再現精度を有する妥当なものであることを示していた。

成果の活用面・留意点

  • 精米中の無機元素をICP-OES法で測定する妥当性は確認できたが、他の食品へ適応するためには、その食品による試験室間共同試験が必要である。

具体的データ

表1 .精米中のマグネシウムの生データ( 室間共同試験の報告値)

図1.試料IIIの各元素の測定誤差

表2 . 試験室間共同試験の結果

その他

  • 研究課題名:食品中のミネラル類測定法の標準化に関する研究
  • 課題ID:321-b
  • 予算区分:運営費交付金
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:堀田 博
  • 発表論文等:堀田(2009)分析化学 58 (2): 107~112