魚類ビブリオ病起因Vibrio anguillarumのDNAプローブ法による迅速同定技術の開発

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要約

Vibrio angillarumに特異的なDNA断片を同定する とともに,非放射性物質標識DNAプロープを用いたコロニーハイブリダイゼーション法による本菌の迅速同定技術を開発した。

  • 担当:家畜衛生試験場研究第一部細菌第2研究室
  • 部会名:家畜衛生
  • 専門:診断予防
  • 対象:魚類
  • 分類:普及

背景・ねらい

Vibrio anguillarumを起因菌とするビブリオ病は,細菌性魚病の中でも古くから知られている疾病の一つである。本病の養殖産業界に与える被害は甚大であり,その被害を最小限にとどめるためには,本病の迅速かつ信頼性の高い診断法が必要である。しかし,本病は症状からは他の細菌性感染症と区別し難く,診断の困難な魚類細菌病の一つとなっている。本病診断のために,従来は細菌学的性状検査による分離菌株の同定が実施されてきた。しかし,分離菌株の菌種同定には,多くの労力と時間を要するため,従来の方法に代わる簡便・迅速かつ特異的な同定法が望まれている。そこで,近年病原細菌の新しい同定法として注目されている,遺伝子の特異的塩基配列を利用したV.anguillarumの迅速同定法について検討した。

成果の内容・特徴

  • 遺伝子ライブラリーから,V.anguillarumに特異的なDNA断片(1.6kb及び1.0kb)2つを選び,非放射性物質(ジゴキシゲニン)で標識したプローブ(それぞれVANG-306及びVANG-366)を作製した。
  • 2つのプローブを用いたコロニーハイブリダイゼーションでは,いずれもV.anguillarumにのみ特異的に反応し,他の主要な急病細菌及び他のビブリオ属菌とは反応しなかった(表1)。特に,V.anguillarumと近縁なV.ordaliiに対しても反応しなかった(図1)。
  • 1コロニー程度の培養菌があれば,翌日の午前中までには菌種同定が可能であり,従来の一般細菌学的性状検査よりも迅速であると考えられた。

成果の活用面・留意点

本法は,非放射性物質であるジゴキシゲニンで標識したプローブを使用するので,ラジオアイソトープを使用できない一般の検査室でも実施可能である。また,少量の培養菌があれば,翌日には結果が判明するので,V.anguillarumの簡易迅速同定法の一つとして活用できる。

具体的データ

表1.プローブVANG-306及びVANG-366の反応性

 

図1.DNAプローブを用いたコロニーハイブリダイゼーション反応像

 

その他

  • 研究課題名:遺伝子利用による魚病細菌の迅速同定技術
  • 予算区分:特別研究(魚病診断)
  • 研究期間:平成2年度~平成5年度
  • 研究担当者:伊藤博哉・内田郁夫・関崎勉・寺門誠致
  • 発表論文等:第116回日本獣医学会講演要旨集,p.155(1993).日本細菌学雑誌,49巻,1号,p.195(1994).