ニューカッスル病ウイルス流行株の抗原分析に基づく疫学
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要約
国内で1928年から1991年迄に野外から分離されたニューカッスル病 (ND)ウイルスは,抗原性から8グループに分類され,ワクチン株と識別 できた。同じ流行時に分離され同じ病原性を有する株は,同一抗原性を示し た。1985年以降に分離された株の多くは,抗原性が同一か非常に類似し ていた。
- 担当:家畜衛生試験場・研究第二部・ウイルス第4研究室
- 部会名:家畜衛生
- 専門:診断予防
- 対象:採卵鶏,肉用鶏
- 分類:指導
背景・ねらい
NDは,これ迄度々流行を繰り返し養鶏産業に大きな被害を与えてきた。しかし,NDウイルス(NDV)は通常の血清学的検査では株間の抗原性を識別できないため,流行株と既存株との関係や,野外株とワクチン株との異同等に多くの疑問点を残していた。そこで,株間の抗原的差異を検出することが出来る単クローン抗体(Mab)を用いて,これ迄分離されたNDVの抗原性を比較すると共に疫学的知見を得ることを試みた。
成果の内容・特徴
- 1928年から1991年迄に鶏,雑,オナガ,レース鳩から分離された35株は,D26株のHN,P,M,NP蛋白を認識するMabを用いたELISAでの抗原分析から,8グループに分類できた(表)。
- 1976年以前の分離株では,同じ流行時に分離され同一の病原性を有するものは,抗原性が同じであった。一方,病原性が同じでも流行時期が大きく違う株では,抗原性が異なっていた。
- 1985年に関東を中心に広い範囲で流行したNDから分離された強毒株は,抗原性から2つのグループ(G5,G6)に分けられた(図)。しかし,その後の発生例からはG5に属する株は分離されてこなかった。
- 千葉県で,1985年から3年に亙り連続したNDは,同じ抗原性(G6)を有する株によって引き起こされていた。
- 1985年以降1989年迄に分離された株の抗原性は,G6に属する株と同じであったが,1991年の分離株(G7)は,P蛋白上の一部の抗原性がG6とは異なっていた。
- 1986年から1991年にレース鳩のNDから分離された株の抗原性(G8)は,それ以前に分離されたレース鳩由来株と一致し,鳩間で長期に亙り同一の抗原性を持つ株の感染が続いていた。1986年に報告された鶏由来中等毒株と鳩由来株の抗原性は一致していた。
- ワクチン株と野外株は,抗原的に識別可能であった。
成果の活用面・留意点
本病の予防対策の確立に関する有効な資料となる。
具体的データ


その他
- 研究課題名:ニューカッスル病ウイルス株間の抗原性の検討
- 予算区分:経常
- 研究期間:平成5年度(平成4年度~平成5年度)
- 研究担当者:今井邦俊
- 発表論文等:
1)第105回日本獣医学会講演要旨集,p.233(1988).
2)第113回日本獣医学会講演要旨集,p.205(1992).