廃用雌豚における卵巣の状態と卵巣疾患の発生率

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要約

廃用雌豚の卵巣を収集し解析したことろ卵胞発育障害が15%,卵巣嚢腫が 12%認められ,卵巣疾患の占める割合が高いことが示された。また,夏の 卵胞発育障害は他の季節に比ベ多かった。

  • 担当:家畜衛生試験場研究第三部保健衛生研究室
  • 部会名:家畜衛生
  • 専門:繁殖障害
  • 対象:豚
  • 分類:指導

背景・ねらい

繁殖母豚の廃用理由として,老齢,運動器障害,感染症などのほかに,無発情や不受胎などの繁殖障害が挙げられる。「豚の繁殖に関する実態調査」(昭和61年農水省畜産試験場)によると,種雌豚の廃用理由のなかで繁殖障害の占める割合は35%,昭和63年の畜産統計では,子取り用雌豚の淘汰理由に占める繁殖障害の割合は33%と高率である。しかし,豚では直腸検査の実施率が低いため卵巣疾患の診断がほとんど行われておらず,繁殖障害豚における卵巣疾患の発生状況についての報告は少ない。そこで,最近の豚の繁殖障害の発生状況を把握するため,廃用雌豚(239頭)について卵巣の卵胞数,黄体数,嚢腫卵胞数などを計数して卵巣の状態を調べ,また,卵巣疾患の発生率について検討した。

成果の内容・特徴

卵胞期には中~大卵胞が10個程度存在し,小卵胞や白体が共存していた。黄体期及び妊娠例は比較的類似した卵巣状態を呈し,7~9個の黄体,20個前後の小卵胞,数個の中~大卵胞が認められた。また,単胞性嚢腫例でも嚢腫卵胞が存在することを除き,黄体期及び妊娠例と類似した状態であった。離乳直後および卵胞発育障害では,20~30個の小卵胞が認められ,卵胞や黄体,白体はほとんど認められなかった。多胞性大型嚢腫では,嚢腫卵胞10個前後と,1~2個の黄体や白体が共存していた(図1)。卵巣の状態は,卵胞期27%,黄体期36%,妊娠3%,離乳直後5%,単胞性嚢腫5%,卵胞発育障害15%,多胞性大型嚢腫7%,その他が2%であった(図2)。卵胞発育障害については,夏における発生率が他の季節に比べ有意に高かったが,多胞性大型嚢腫については,季節別の発生率に有意な差は認められず,年間を通じて10%前後の発生率であった(表)。

成果の活用面・留意点

廃用雌豚における卵巣疾患の発生状況から見て,繁殖用雌豚においても卵胞発育障害,卵巣嚢腫などの発生率は高いものと考えられる。豚では牛に比べ直腸検査の実施率が極めて低いが,大型の繁殖雌豚では直腸検査が可能であり,繁殖障害豚については卵巣の検査を行い,正確な診断をする必要がある。

具体的データ

図1.卵巣1個当たりの卵胞、黄体などの平均個数

 

図2.廃用雌豚における卵巣の状態

 

表1.季節別にみた卵巣の状態

その他

  • 研究課題名:豚における卵巣嚢腫の病態解明
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成3年度~平成5年度
  • 研究担当者:岩村祥吉・加茂前秀夫・吉岡耕治
  • 発表論文等:1)第58回日本養豚学会講演要旨集,p.8(1992).