鶏ロイコチトゾーン症の再感染防御には細胞性免疫が重要

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

免疫抑制剤シクロスポリンAで処置した鶏におけるLeucocytozoon caulleryi の感染状況及び免疫学的変化から,鶏ロイコチトゾーン症の感染防御には細胞性免疫が重要であることが明らかとなった。

  • 担当:家畜衛生試験場研究第一部原虫第2研究室
  • 部会名:家畜衛生
  • 専門:診断予防
  • 対象:鶏
  • 分類:研究

背景・ねらい

いわゆる飼料安全法の施行以来,産卵鶏に対して薬剤の使用が大幅に規制され,薬剤に代わる有効な予防対策が無い鶏ロイコチトゾーン症は,生産性に被害を与える原虫性疾病として大きな問題となっている。また,出来る限り薬剤を用いずに生産した畜産物を好む消費者二ーズとあいまって,薬剤に代わる新しい有効な予防方法の開発が切望されており,その一つとして,免疫学的予防法の開発が考えられている。しかし,鶏ロイコチトゾーン症の感染防御において,ファブリキウス嚢及び液性抗体の役割は極めて少ないことが明らかになっていることから,細胞性免疫の役割について検討した。

成果の内容・特徴

  • Leucocytozoon caulleryi感染鶏では,末梢血液中から原虫が消失し始める初感染後21日に細胞性免疫に関与するCD8陽性細胞及びT細胞レセプター(TCR)としてγδ鎖を持つ細胞の大幅な増加が見られた(図)。
  • 免疫抑制剤シクロスポリンA(CsA)で処置した鶏では,L. caulleryiによる初感染耐過後も本原虫に対する免疫は弱く,再感染させると末梢血液中への原虫の出現(パラシテミア)が見られた。非処置対照の正常鶏では,パラシテミアは全く認められなかった(表1)。
  • CsA処置鶏では,細胞性免疫に関与する各細胞が減少し,特にCD8陽性細胞及びTCRγδ陽性細胞において著しかった。また,コンカナバリンA(ConA)に対するリンパ球増殖反応及びインターロイキン2(IL‐2)産生の大きな抑制が見られた(表2)。

成果の活用面・留意点

今後,L. caulleryiに対するワクチンを開発するに当たっては,細胞性免疫を効率よく活性化するT cellエピトープ及び刺激因子を探索する必要がある。

具体的データ

図1.L.caulleryi感染鶏のT細胞サブセットの変動

 

表1.シクロスポリンA処置鶏でのL.caulleryi感染

 

表2.シクロスポリンA処置鶏での免疫学的変化

その他

  • 研究課題名:鶏ロイコチトゾーン症の細胞性免疫の検討
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成5年度(平成2年度~平成5年度)
  • 研究担当者:磯部尚・志村亀夫
  • 発表論文等:
    1)シクロスポリンA処理鶏でのLeucocytozoon caulleryi再感染,第113回日本獣医学会講演要旨,p.210(1992).
    2)ロイコチトゾーンに対する免疫とワクチンの可能性,第114回日本獣医学会講演要旨集,p.82(1992).
    3)Leucocytozoon caulleryi再感染抵抗性における細胞性免疫の重要性,寄生虫学雑誌42,Suppl.p.60(1993).