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オーエスキー病ウイルスの増殖に必要なウイルス早初期(IE)遺伝子を欠損 させ,特定の細胞のみで増殖可能なウイルス欠損変異株を作出した。欠損変異 株はウイルスの増殖機構を調べる上で有用で,新しいワクチンやウイルスベク ターとしての応用が可能と考えられた。
オーエスキー病ウイルスは宿主の豚に感染し易いが,若令豚を除いて感染耐過する。ところが,ウイルスは耐過豚の体から排除されることなく三叉神経節に潜むようになる(潜伏感染)。潜伏感染豚にストレスなどが加わると潜んでいたウイルスは増殖力を回復して体外に排泄され,周囲の豚に感染する。しかし,なぜ,神経細胞に潜伏感染するのか?何によって再活性化が起きるのか?は,末だ解明されていない。オーエスキー病ウイルスは細胞に感染すると細胞内因子により増殖のきっかけとなるスイッチ(ウイルス遺伝子)がON(発現)され、100種近いウイルス遺伝子を次々と発現し増殖を行う(図1,1)。このスイッチに相当する遺伝子は1種で,遺伝子と呼ばれる制御遺伝子である。この遺伝子を取り除いてしまえば、ウイルスは細胞に感染するがまったく増殖しなくなると考えられる(図1,2)。この状態が潜伏感染のモデルとして期待される。そこで,IE遺伝子を欠損させると同時にスイッチをONする細胞内因子があると感染細胞が青くなるように別の遺伝子を挿入したオーエスキー病ウイルスを遺伝子操作により選抜し,その性状を調べた。
AY64株は待定の細胞(IE遺伝子発現細胞)でしか増殖しないため,病原性も欠落したと考えられる。つまり,安全なオーエスキー病の新型ワクチンとして有望視される。さらに通常の培養細胞ではスイッチは常にONされるから,青くなる遺伝子の代わりに他の遺伝子を挿入すれば,非病原性ウイルスベクターとしても有用である。遺伝子導入の困難な神経細胞にも有効と考えられる。