豚小胞病ウイルス(SVDV)の中和エピトープの解析

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要約

中和モノクローナル抗体に対するエスケープミュータント(中和抵抗性変異 株)の塩基配列の変異解析から中和エピトープ(抗原決定基)をコードする 遺伝子部位を特定した。この中和エピトープはウィルスの構造蛋白サブユニ ットの三次元シュミレーションモデルで5ケ所に分布していることを明らか にした。

  • 担当:家畜衛生試験場・海外病研究部・予防疫学研究室
  • 部会名:家畜衛生
  • 専門:診断予防
  • 対象:豚
  • 分類:研究

背景・ねらい

豚小胞病ウイルス(SVDV)は,豚に感染して口蹄疫類似の水胞性病変を形成する海外伝染病の病原体で,ピコルナウイルス科に属し,その全遺伝子の塩基配列はすでに決定されている。SVDVの中和エピトープをコードする遺伝子部位及びウイルス粒子上の中和エピトープの位置を明らかにする目的で,中和モノクローナル抗体に対するエスケープミュータントを作出し,その遺伝子の塩基配列の変異からアミノ酸変異部位を特定することにより,中和エピトープの解析を行った。

成果の内容・特徴

  • 中和モノクローナル抗体8クローンを用いて作出されたエスケープミュータントウイルス25株は,その中和抵抗性の獲得パターンから5グループに分けられた(図1)。
  • 各エスケープミュータントの構造蛋白領域をコードする。DNAクローニングを行い,その塩基配列を決定した。変異は各々について1~3ケ所認められたが,同一モノクローナル抗体を用いて作出されたミュータントの変異を比較することにより1ケ所の有効なアミノ酸変異が推定された。この変異はすでに報告のあるポリオウイルスの中和抗原エピトープ部位(site1,2,3a,3b,3c)に相当するSVDVの構造蛋白部位に存在したが,グループ分けがポリオウイルスと一部異なっていた(表1)。
  • ポリオウイルスでX線解析による立体構造のデータを利用し,SVDVの3次元シュミレーションモデルを作製し,得られた成績を解析したところ,全ての中和エピトープはウイルス粒子表面に位置し,それらは構造蛋白サブユニット中の5ケ所に分布していた(図2)。
  • 以上の成績から,SVDVの構造蛋白サブユニット中の5ケ所の中和エピトープのサイト名を表2のように提唱した。

成果の活用面・留意点

SVDVの中和エピトープの部位が明らかになり,野外ウイルスの中和抗原性の解析が可能となった。さらにこの成果は,遺伝子工学的手法を用いた本病ならびに口蹄疫等のワクチン開発及び診断に活用される。

具体的データ

図1.エスケープミュータント交差中和

表1.エスケープミュータントのアミノ酸変異部位

図2.SVDV構造蛋白サブユニットの3次元シミュレーションモデルにおける中和エピトープ部位

 

表2.豚小胞病ウイルス(SVDV)の中和エピトープ部位

 

その他

  • 研究課題名:豚小胞病ウイルスの遺伝子の構造と機能解析
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成4年度(昭和63年度~平成4年度)
  • 研究担当者:菅野徹・井上亙・佐伯隆清・山口成夫
  • 発表論文等:
    1)豚小胞病ウイルスの中和抗原コード遺伝子の解析,第41回日本ウイルス学会総会演説抄録,p272(1993).