チュウザンウイルスのカプシド蛋白質遺伝子の構造
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要約
チュウザンウイルスのカプシドタンパク質VP2,VP5およびVP7は 各々ゲノム分節2,6および7によりコードされており,他の血清群に属するブルータングウイルス,シカ流行性出血熱ウイルス,アフリカ馬疫ウイルスとの間で強い遺伝的関連性が認められる。
- 担当:家畜衛生試験場製剤研究部ウイルス製剤研究室
- 部会名:家畜衛生
- 専門:診断予防
- 対象:牛
- 分類:研究
背景・ねらい
チュウザンウイルスは,10分節からなる2本鎖RNAゲノムを有するオルビウイルス属パリアム血清群のウイルスである。パリアム血清群のオルビウイルスは,これまで病原性が明らかにされておらず,充分な研究が行われていなかったが,チュウザン病の発生が見られるに至り,牛の流行性異常産の重要な病因の一つとして認識されるようになった。そこでウイルス遺伝子の構造および機能を明らかにし,変異しやすいパリアム血清群のウイルスの分子疫学的研究や新世代ワクチン・診断液の開発に資する。
成果の内容・特徴
- チュウザンウイルスK‐47株の2本鎖RNAを鋳型としてcDNAクローニングを実施し,cDNAライブラリーを作製した。
- 血清型特異性に関与している外殻カプシドタンパク質VP2およびVP5,また血清群特異性に関与しているコアタンパク質VP7をコードしていると思われるゲノム分節2,6および7のcDNAクローンについて塩基配列を決定したところ,その総塩基数は3055bp(分節2),1610bp(分節6)および115bp(分節7)であり,いずれも単一のopen reading frameを有していた(表1)。
- mRNA-senseの両末端は分節2ではオルビウイルスに特徴的な末端共通塩基配列5’GUUAAA……ACUUAC3’と一致していたが,分節6および7では若干の塩基の置換が認められた(図1)。また分節したゲノムを有する他のウイルス同様に,末端部位に近接して短いinverted repeatが認められた。
- 各分節がコードしているタンパク質は1002個(分節2),521個(分節6)および348個(分節7)のアミノ酸から構成されていた(表2)。
成果の活用面・留意点
感染防御関連遺伝子が単離され,その塩基配列が決定されたことにより,cDNAプローブやRT-PCR法等を用いたウイルス遺伝子の検出による診断法や安全で有効な組み換えワクチンの開発,またパリアム血清群の分子疫学的研究への応用の可能性が示された。
具体的データ



その他
- 研究課題名:チュウザンウイルスの病原性遺伝子;異常産関連ウイルスの病
- 原性遺伝子の発現調節機構の解明
- 予算区分:ハイテク(動物DNA)
- 研究期間:平成元年度~平成5年度
- 研究担当者:山川睦・田中深雪・後藤義之・徳久修一・古内進
- 発表論文等:
1)第110回日本獣医学会講演要旨集,p.168(1990).
2)第117回日本獣医学会講演要旨集,p.179(1994).