腫瘍壊死因子欠損マウスの作出
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要約
遺伝子ターゲット法を用いTNFα遺伝子欠損マウスの作出を行った。
本マウスはTNFαの機能解析や家畜感染症の生体防御機構解明に有効
に利用出来る。
- 担当:家畜衛生試験場・生体防御研究部・生物物理研究室・実験動物研究室・林水産先端技術研究所
- 部会名:家畜衛生
- 専門:生体防御
- 対象:実験動物
- 分類:研究
背景・ねらい
腫瘍壊死因子TNFαは,遊走細胞の一種である活性化したマクロファージから分泌されるサイトカイン(ホルモン様生理活性物質)で,種々の感染症において感染防御能を示し,また,細菌の内毒素によるエンドトキシンショックや細菌感染による敗血症にも関与している。免疫系においてもTNFαはリンパ球の増殖・分化の重要な情報伝達物質として働き,その作用は多岐にわたっている。近年,マウス胚性幹(ES)細胞を用いた相同組換えによる遺伝子ターゲット法は遺伝子の機能解析を行ううえで一般的な方法になってきている。そこで個体レベルでのTNFαの機能解析を行うことを目的として遺伝子ターゲット法によるTNFα遺伝子欠損マウスの作出を行った。
成果の内容・特徴
- TNFα遺伝子の第3及び第4エキソンの一部を削除し,外来遺伝子が挿入された指標としてネオマイシン耐性遺伝子(Neo),ランダムな遺伝子挿入細胞を除くために5’端側にジフテリア毒素A断片遺伝子を組み込んだ遺伝子ターゲッティングベクター(Bluescript)を構築した。(図1)
- ターゲッティングベクターをES細胞に導入し,ES細胞の内在性遺伝子との相同組換えにより得られたTNFα遺伝子の欠損したネオマイシン耐性のES細胞のクローンを単離した。
- このES細胞クローンをマフ7ス胚盤胞に注入し,体の各組織がES細胞と宿主胚の両方で構成されたキメラマウスを得た。
- キメラマウスを互に交配してTNFα欠損へテロ接合体及びホモ接合体マウスを得た。
- TNFα欠損ホモ接合体マウスは正常マウスにおける致死量のエンドトキシンを投与しても生存することができた。(図2)
成果の活用面・留意点
TNFα欠損マウスの作出により個体レベルのTNFαの機能解析が可能になった。家畜の病原微生物に対する感染防御におけるTNFαの役割を解明し,さらに,このサイトカインによる治療法の可能性が考えられた。
具体的データ


その他
- 研究課題名:欠損変異を導入した遺伝的疾患モデルの作出,MHCクラス
- III領域の解析
- 予算区分:ハイテク(動物DNA),経常
- 研究期間:平成3年度~平成5年度
- 研究担当者:山本理恵・谷口隆秀・百渓英一.松原悠子・今村憲吉・後藤さおり・福田勝洋・関川賢二
- 発表論文等:腫瘍壊死因子(TNFα)欠損マウスの作出とその解析,
第16回日本分子生物学会年会講演要旨p.1281(1993).