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大型ピロプラズマ原虫 Babesia ovata のゲノムDNAライブラリーから,本原虫 に特異的なDNA断片をクローニングした。得られたクローンは,約100 pgの原虫DNA(8x103の原虫体に相当)を検出可能性であり,B. ovataの鑑別診断用プローブとして有用であることが示唆された。
大型ピロプラズマ原虫(Babesia ovata)は全国の牧野に分布し,主に小型ピロプラズマ原虫(Theileria sergenti) との混合感染によってウシに重度の貧血をもたらすことから,放牧衛生上重要な病原体の一つと考えられている。大型ピロプラズマ病の予防には抗原虫剤と殺ダニ剤とを併用する方法が用いられているが,これらを有効に実施するためには牧野の汚染状況を的確に把握する必要がある。しかし,本病の診断は主として血液塗沫上での原虫検出,血清反応,臨床所見によっており,的確な診断が困難な場合が多い。また,牛の輸入拡大にともなう外国産強毒原虫,特に家畜伝染病予防法施行規則で指定されているB. bovisならびにB. bigeminaの国内への浸潤・蔓延を防止するためにも感染原虫を迅速に鑑別診断する必要がある。これらのことから,DNAを利用した高感度の原虫鑑別診断法の開発が要望されている。
今回選択されたゲノムDNAクローンBOZAP 6および 7はB. ovataに特異的な反復配列のクローンである可能性があり,本原虫の鑑別診断用プローブとして有用であることが示唆された。Digoxigenin (DIG)などの化学物質で標識したDNAプローブを用いたドットハイブリダイゼーション法は,大型ピロプラズマ原虫の迅速な鑑別診断法として広く普及可能であると考えられる。