牛ヨーネ病の肉芽腫病変におけるTNF-αの局在とTリンパ球サブクラスの動態

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要約

牛の腸管に形成されたヨーネ病の肉芽腫病変では、菌増殖のみられる類上皮細胞内やラングハンス型巨細胞内にTNF-αの局在がみられ、典型的な臨床症状を 呈した多症例で認められたLepromatous型病変では、CD4陽性Tリンパ球の減少がみられた。これらから、本症の病理発生おける細胞性免疫応答の 抑制が示唆された。

  • 担当:家畜衛生試験場研究第三部病理第2研究室
  • 連絡先:0298(38)7776
  • 部会名:家畜衛生
  • 専門:診断予防
  • 対象:乳用牛・肉用牛
  • 分類:研究

背景・ねらい

牛のヨーネ病は、ヨーネ菌(Mycobacterium paratuberculosis)による持続性慢性下痢を主徴とする感染症である。本症の特徴的病変は、腸間膜リンパ節や回腸を中心とした肉芽腫の形成である。ヨーネ菌感染防御における生体側の免疫反応は細胞性免疫が主体であり、Tリンパ球系細胞による細胞間相互作用が感染成立および防除の鍵を握っていると推察されている。そこで本研究では、肉芽腫病変に参画するTリンパ球系細胞の動態と病変内のサイトカインについて免疫組織学的に検索し、ヨーネ病の病理発生機構の解明を試みた。

成果の内容・特徴

  • 牛のヨーネ病にみられる肉芽腫病変は、病理組織学的に2つの型に大別された。1つは、病巣が巣状で菌が少なくLanghans型巨細胞の出現頻度が高いTuberculoid型(T型)で、他方は、瀰漫性に類上皮細胞が増殖し、多数の菌増殖がみられるLepromatous型(L型)であった。ヨ-ネ病の典型的な臨床症状を伴う症例の多くが後者の型を示していた。
  • それぞれの型についてTリンパ球を免疫染色によりサブクラス分けし、画像解析装置を用いて解析した。T型はL型および対照に比べてCD4陽細胞が優勢であったことから、T型ではCD4陽性リンパ球による細胞性免疫が機能し、L型の免疫抑制にはCD4陽性リンパ球の減少が関与するものと思われた(図1)。
  • 肉芽腫病巣内の類上皮細胞結節とLanghans型巨細胞には、TNF-α免疫染色と抗酸菌染色の二重染色により、細胞内のTNF-αの局在が菌の存在部に一致して認められた(図2)。TNF-αは、マクロファージの抗原提示を他のサイトカインとの協働により抑制することが知られており、その局在はヨーネ菌の細胞内増殖に重要な意味を持つと思われた。

成果の活用面・留意点

本研究の成果は、牛のヨーネ病の診断法や予防法を開発する際の基礎的情報として役立つ。今後はサイトカインネットワークを含めた免疫担当細胞間の相互作用を解明し、免疫抑制機序を解明する。

具体的データ

図1.ヨ-ネ病の肉芽腫病変におけるTリンパ球サブクラスの動態

 

図2.類上皮細胞結節内のヨーネ菌はTNF-αの局在部に一致して認められる。

 

その他

  • 研究課題名:下痢症の病態成立機構に関与する腸管関連リンパ組織の機能の解明
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成5年度~平成7年度
  • 発表論文等:
    • 第119回日本獣医学会講演要旨集,p.85 (1995)
    • J. Comp. Path., 114: 81-91 (1996)
    • 臨床獣医、14:20-27 (1996)