ストレスによって誘発されたラットの排卵抑制と中枢神経活動の関連性の検討
※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。
要約
ストレスによって誘発されるラットの繁殖障害の発症機序について実験的に検討し,ストレスに起因する中枢の神経活動の変化が排卵抑制に関与していることを明らかにした。また,α2拮抗薬がストレスによる排卵抑制を解除することを示した。
- 担当:家畜衛生試験場研究第三部病態生理研究室
- 連絡先:0298(38)7810
- 部会名:家畜衛生
- 専門:繁殖障害
- 対象:共通
- 分類:研究
背景・ねらい
ストレスを受けた家畜は,低受胎,発情徴候の減退,発情周期の延長等の繁殖障害を起こすことが知られている。本研究では,ストレスによる中枢神経活動の変化に着目し,この神経活動の変化を介してストレスが卵巣に及ぼす影響について,ラットを用いて基礎的検討を行なった。
成果の内容・特徴
- いくつかの既知のラットのストレス実験系のうち,回転篭による自発運動と絶食を組み合わせた系で排卵の抑制が高率に起こることを見出した。この条件下で排卵抑制状態にあるラットに,レセルピンを腹腔内投与してアドレナリンを枯渇させると,排卵抑制が解除された(図1)。
- ストレス状態にないラットにおいて,α2作動薬であるキシラジンの腹腔内投与あるいはクロニジンの脳室内投与により,排卵が高率に抑制された。
- 上記のストレス条件を負荷したラットにα2拮抗薬であるイダゾキサンを脳室内投与すると,一部の個体で排卵抑制が解除された(図1)。
- ストレス条件を負荷したラットでは,血漿中コルチコステロン濃度は高値を示した(図2)。ストレスを与えない条件でα2作動薬およびα2拮抗薬を投与した個体群の血漿中コルチコステロン濃度の変化は,同条件で生理食塩水を投与した群と比べて差がみられなかった(図3)。また,LHサージの起こる前後にACTHを投与して血漿中コルチコステロンを高濃度に維持しても,排卵が抑制されなかった。
以上のことから,コルチコステロンが排卵抑制に関与していることは証明されなかった。
成果の活用面・留意点
ストレスによって誘発される排卵の抑制には,脳内のアドレナリン作動性神経が関与していることが明らかになった。また,α2アドレナリン作動性神経の活動とストレス関連物質である副腎皮質ステロイドとの間に相関性が見出せなかった。このことから,ラットの排卵抑制には,下垂体-副腎皮質系より,下垂体-卵巣系の上位中枢にある神経活動の変化の影響を強く受けることが示唆された。
具体的データ



その他
- 研究課題名:ストレスによる視床下部神経の活動抑制を介した卵巣の機能障害
- 予算区分:経常
- 研究期間:平成5年度~平成7年度
- 発表論文等:
- 第41回日本実験動物学会講演要旨集, P.133(1994)
- 第42回日本実験動物学会講演要旨集, P.112(1995)