牛ウイルス性下痢・粘膜病ウイルス持続感染牛の発症試験

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要約

牛ウイルス性下痢・粘膜病ウイルス持続感染牛は、免疫能が低下した状態では持続感染しているウイルスと抗原性が異なる細胞病原性ウイルスが重感染した場合でも粘膜病を発症することを実験的に証明した。

  • 担当:家畜衛生試験場北海道支場第5研究室
  • 連絡先:011(851)5226
  • 部会名:家畜衛生
  • 専門:診断予防
  • 対象:牛
  • 分類:研究

背景・ねらい

牛は免疫組織が未完成な胎児期に牛ウイルス性下痢・粘膜病ウイルス(BVDV)に感染すると、BVDVを異物として認識できなくなり、BVDVが持続感染した状態で生れてくる。このような牛に同一抗原性の細胞病原性(CP)ウイルスが重感染すると、粘膜病を発症すると考えられている。しかし、BVDVに対する中和抗体を持つ持続感染牛や、持続感染ウイルスと抗原性が異なるCPウイルスが分離される粘膜病発症牛の症例があるため、抗原性が異なるCPウイルスの実験感染による粘膜病の発病について検討した。

成果の内容・特徴

  • BVDV持続感染牛にDexamethasoneを投与し、細胞性免疫能を低下させた状態で持続感染ウイルスと抗原性の異なるCPウイルスを接種すると、短期間で粘膜病を発症した(表1)。
  • これらの粘膜病発症牛から分離されたCPウイルスの抗原性は、持続感染しているウイルスとは異なり、重感染に用いたCPウイルスに近いものであった。また、粘膜病発症時の血清中にはCPウイルスに対する中和抗体が検出された(表2)。
  • 抗原性の異なるCPウイルスの重感染による粘膜病発症牛の腸管組織を病理組織学的に調べると、CPウイルスは粘膜固有層やリンパ節のリンパ洞の病変部を中心に分布していたが、腸管粘膜上皮や粘膜下組織の病変部には主に持続感染している非細胞病原性ウイルスが分布していた。

成果の活用面・留意点

BVDV持続感染牛は、免疫能が低下した場合には持続感染ウイルスと異なる抗原性のCPウイルスが重感染した場合も、そのウイルスが増殖することにより粘膜病を発症する。粘膜病の発症機序について、BVDVの病原性や抗原性からだけでなく、宿主側の免疫能からも研究する必要がある。

具体的データ

表1.実験牛の臨床症状

 

表2.粘膜病発症牛から分離されたウイルスの抗原性

 

写真.回腸後部の粘膜固有層から粘膜下織にかけて分布するウイルス抗原。

 

その他

  • 研究課題名:家畜の持続感染症に対する免疫制御機構の解明
  • 予算区分:大型別枠(生物情報)
  • 研究期間:平成6年度~9年度
  • 発表論文等:
    • 第119回日本獣医学会講演要旨集、 p.77.(1995)
    • 第119回日本獣医学会講演要旨集、 p.123.(1995)