健康牛及び乳房炎牛における血液及び乳汁化学発光能

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要約

乳房炎牛では健康牛に比べて乳汁CL能が著しく高く,血液CL能は逆に低いことが示された。また,同一PLテスト値下での乳汁CL能と体細胞数は良く相関した。

  • 担当:家畜衛生試験場 病態研究部 病態生理研究室
  • 連絡先:0298(38)7810
  • 部会名:家畜衛生
  • 専門:診断予防
  • 対象:牛
  • 分類:普及

背景・ねらい

乳用牛の乳房炎は,一度罹ってしまうと完治が非常に難しいため,発症の極く初期の段階での対処が特に重要になる。そのため,効率的な早期診断法の確立が強く望まれている。 そこで,血液と乳汁に共通して存在し,かつ乳質にも深く関わっている貪食白血球に着目し,貪食・殺菌時に放出される活性酸素量に比例して発生する光を測 定する方法(化学発光測定法,CL法)によって血液及び乳汁中の貪食白血球機能を調べた。また,従来から乳房炎や乳質の判定に利用されているPLテスト値 や乳汁体細胞数との比較検討も行った。

成果の内容・特徴

  • 健康牛群及び乳房炎牛群間における乳汁CL能と血液CL能,血液好中球数の比較 乳用ホルスタイン種59頭を用いた。それらの牛を高乳量牛群(H群24頭,日乳量約34kg),低乳量牛群(L群15頭,日乳量約20kg)及び乳房炎 治療牛群(M群20頭)に分け,各々の群での血液CL能,乳汁CL能,血液白血球数及び好中球数の比較検討を行った。血液及び乳汁CL能の測定法として, 血液又は乳汁50μlにHepes Eagle's-MEM(細胞浮遊液)450μl,ルミノール(増光剤)10μl,ザイモザン(細胞刺激剤)10μlを加え,化学発光測定器(ベルトール ド社,Multi-Biolumat, LB9505C)を用いて測定を行った。その結果,血液CL能は,H群とL群に比べてM群は低い値であった。一方,乳汁CL能はH群,L群ともほぼゼロの 値であったが,M群では著しく上昇した。白血球数及び好中球数は各群間での差は認められなかった。このように,乳房炎牛では健康牛に較べて乳汁CL能が著 しく高く,逆に血液CL能は低いことが示された。血液CL能の主な由来白血球とされる好中球数の減少を伴わずに血液CL能の低下が起きたことは,乳房炎牛 では貪食白血球そのものが機能低下を来していることが推察される(図1)。
  • 乳房炎治療牛群におけるPL値と乳汁CL能及び乳汁体細胞数の相関性の検討 M群10頭(40分房)を用い,同一PL値下で乳汁CL能と乳汁体細胞数を比較検討した。その結果,これらは良く相関した(図2)。
  • PLテストと乳汁CL能を用いての乳房炎診断の検討 ホルスタイン56頭(223分房,1~6産)を用い,各産次数毎にPL値の乳房炎診断基準を±以上又は+以上にした場合及び乳汁CL能のそれを1X106CPM以上または5X106CPM以上にした場合の乳房炎の陽性率を比較検討した。その結果,PLテスト値と乳汁CL能の値は同一傾向で推移した(図3)。

成果の活用面・留意点

    乳汁CL能は,細菌侵入とともに乳房内に集積する貪食白血球の数又は機能を反映しているため,早い段階での感染を検知できる。また,測定法そのものは非常に簡便である。従って,PLテストの補完手法として,現場応用に結びつく基礎的データとなり得る。

具体的データ

図1 高乳量牛(H)群、低乳量牛(L)群及び乳房炎治療中牛(M)群の血液CL能、乳汁CL能及び血液好中球数

乳房炎治療中牛群におけるPLテスト値と乳汁CL能及び乳汁体細胞数との関係

図3 PL値と乳汁CL能による乳房炎の診断

その他

  • 研究課題名:環境ストレス評価のための生体防御パラメータの確立
  • 予算区分:特研「高品質乳」
  • 研究期間:平成6年度~平成8年度
  • 発表論文等:
       1.第120回日本獣医学会講演要旨集,p.171(1995)
       2.第122回日本獣医学会講演要旨集,p.160(1996)
       3.77th Conference of Research Workers in Animal Diseases(USA), p.45(1996)