PCR法によるMycobacterium aviumM. intracellulareの同定

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要約

簡易抽出法を用いて抗酸菌よりテンプレートDNAを抽出し,1組のプライマーでPCRを実施する事により,M.aviumからは300bpあるいは1776bpの産物がえられ,M.intracellulareからは1070bpの増幅産物が得られる。

  • 担当:家畜衛生試験場北海道支場臨床微生物研究室
  • 連絡先:011(851)5226
  • 部会名:家畜衛生
  • 専門:診断予防
  • 対象:鶏,豚,牛
  • 分類:普及

背景・ねらい

Mycobacterium avium complexと呼ばれる菌群は,トリの結核,ヒトの非定型抗酸菌症及びブタの抗酸菌症を引き起こすM.avium subsp.aviumM.avium subsp.silvaticum,またウシのヨ-ネ病を引き起こすヨ-ネ菌(M.avium subsp.paratuberculosis),さらにヒトの抗酸菌症を引き起こすM.intracellulare, またこれらの何れにも属さない菌株で構成されいる。各菌種は生化学的および血清学的性状により鑑別されてきたが,判定に2~8週間を要するために迅速化が 望まれていた。また,分子遺伝学的手法を応用するために抗酸菌よりDNA抽出する方法は煩雑であり,簡便な抽出法の開発も望まれていた。 そこで,培地上のコロニーからテンプレートDNAを簡易に抽出する方法を検討した。さらに,M.avium complex の各菌種の迅速簡便な同定法を検討した。

成果の内容・特徴

  • 300bp以下のDNA増幅では煮沸法を用いても十分であるが,1kbp以上のDNA増幅を必要とする場合ではBIO-RAD社のインスタジーンマトリックスを用いた抽出法(インスタジーン法)から良好な成績が得られた(図1)
  • 培地上に発育した抗酸菌参照株のコロニーより,インスタジーン法を用いてテンプレートDNAを抽出し,1組のプライマーでPCRを実施した。その結果,M.aviumからは300bpあるいは1776bpの産物がえられ,他方M.intracellulareからは1070bpの増幅産物が得られ,それぞれの同定が可能であった。(図2)。
  • 野外分離株において本法の有用性が示された(表1)。

成果の活用面・留意点

本同定法は培地上に発育した抗酸菌を対象としたものである。

具体的データ

図1 抽出方法の検討

図2 参照株におけるPCR産物

表1 参照株及び野外株

その他

  • 研究課題名:Mycobacterium avium における遺伝子挿入配列の分布(平成6~8年度)
  • 経常
  • 家畜における粘膜感染機構に関する研究(平成7年度)科・重点基礎
  • 発表論文等:
      1.J. Clin. Microbiol., 33, 2102-2106(1995)
      2.第63回日本細菌学会北海道支部学術総会抄録集,p.34-35(1995)
      3.結核,70:p.102(1996)