家畜由来サルモネラの血清型

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要約

1980年から1995年の16年間に国内で分離された牛,豚,鶏由来サルモネラの血清型別結果をまとめた。牛由来株はDublin,Typhimuriumの2血清型が84.3%を占めた。豚由来株はCholeraesuis,Typhimurium,Derbyの3血清型が71.2%を占めた。鶏由来サルモネラは49血清型と多岐にわたった。

  • 担当:家畜衛生試験場 飼料安全性研究部 ズーノーシス研究室
  • 連絡先:0298(38)7815
  • 部会名:家畜衛生
  • 専門:診断予防
  • 対象:牛豚鶏
  • 分類:指導

背景・ねらい

サルモネラは生化学的性状,DNAの相同性等から現在は1属2菌種6亜種に整理されている。一方,サルモネラは1934年以来,カウフマン-ホワイトの抗原構造表に基づく菌体(O)抗原と鞭毛(H)抗原の組み合わせにより,2,300を越す血清型に分けられている。
血清型は病原性や宿主特異性と関連し,最も基本的な疫学マーカーであることから,当研究室では飼料および家畜由来サルモネラの血清型別を継続的に実施 し,その疫学的動態の把握につとめてきた。そこで家畜衛生ならびに公衆衛生の観点から,過去16年間の家畜由来サルモネラの血清型別結果をまとめ,文献的 に報告されているヒト由来株の血清型別結果と比較することにより,感染源としての家畜の役割を明らかにする。

成果の内容・特徴

    1980年から1995年の16年間に国内で分離された牛,豚,鶏由来サルモネラ,総計1,226株は59血清型に型別された。
  • 牛由来株は20血清型663株で,Dublin,Typhimuriumの2血清型が559株と全体の84.3%を占めた。
  • 豚由来株は14血清型111株で,Choleraesuis,Typhimurium,Derbyの3血清型が79株と全体の71.2%を占めた。
  • 鶏由来株は49血清型452株と多岐にわたった。Agona,Hadar,Enteritidis,Typhimurium,Sofia,Havana,Mbandaka等が主要な血清型であった。
  • 1980年から1994年の15年間に東京においてヒトから分離されたサルモネラの血清型と本報の家畜由来株の血清型を比較した(表1)。それぞれ上位30位以内の血清型のうち,18血清型が両者に共通であった。ヒトの感染源としての家畜の重要性を示唆するものと考えられた。

成果の活用面・留意点

本報の家畜由来サルモネラ59血清型の多くは家畜に疾病を引き起こさないが,ヒトの散発感染例からしばしば分離されており,公衆衛生上決して無視することは出来ない。すなわちサルモネラが分離されればどの血清型でも対策には注意を要すると考えるべきであろう。

具体的データ

表1 ヒトおよび家畜由来サルモネラの血清型

その他

  • 研究課題名:飼料汚染サルモネラの疫学的動態
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:昭和53年度~平成8年度
  • 発表論文等:
      1.第122回日本獣医学会講演要旨集,P.193(1996)
      2.家畜衛生試験場研究報告,102・103:43-48(1997)