豚水胞病ウイルスの第1中和抗原部位の人為変異許容領域

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要約

豚水胞病ウイルスの第1中和抗原部位近傍の構造を部位特異変異導入法並びにコンピューターモデリングにより解析したところ,リジン;アミノ酸番号80(K-80)からアラニン;アミノ酸番号90(A-90)の領域が変異導入可能な,自由度の高い領域であることが判明した。

  • 担当:家畜衛生試験場 海外病研究部 理化学研究室
  • 連絡先:0423-21-1441
  • 部会名:家畜衛生
  • 専門:診断予防
  • 対象:豚
  • 分類:研究

背景・ねらい

豚水胞病ウイルス(SVDV)をベクターとした口蹄疫組換えワクチンの開発を目的とし,中和抗原領域が外来組換え抗原の抗原性提示に最も効果的と考え, いくつかの中和抗原部位を明らかにしてきた(J.Gen.Virol. 76, 3099-3106 1995)。 今回,これら中和抗原部位について外来抗原組換え可能領域を明らかとするため,得られた中和抗原部位の1つである第1中和抗原部位についてミュータジェ ネシス法並びにコンピューターモデリングを用い人為的に変異を加えてもウイルス複製に影響を及ぼさない領域(人為変異許容領域)を解析した。

成果の内容・特徴

  • 第1中和抗原部位近傍(サイト1)に対して部位特異変異導入法によりアミノ酸を付加し,プロリンに続きセリン2残基まで挿入しても感染性ウイルス粒子の発現に影響を受けない領域;K-80~A-90を認めた (図1) 。
  • プロリン1残基を挿入した変異ウイルス(No.4-No.9:図1)はいずれも中和モノクローナル抗体と反応しないことから,領域;K-80~A-90は,第1中和抗原領域に含まれることが示唆された。
  • コクサッキーウイルスB(CB)の3次元構造情報を元に,SVDVのサイト1の3次元構造を予測したところ,この部位が独立したループ構造を作り,各アミノ酸がループの外側に向かって配置されていることが予想された( 図2,図3)。このことは,外来のアミノ酸を挿入してもウイルス粒子形成には影響しなかった実験結果とよく一致していた。
  • この領域をアミノ酸置換を伴う制限酵素認識配列に置換しても感染性ウイルス粒子の発現に影響は認められず,人為変異許容度が高い領域であることが明らかとなった。(図4)。 以上より,領域;K-80~A-90は第1中和抗原領域に含まれる人為変異許容領域であり,外来抗原との組換えに適した領域であると考えられた。

成果の活用面・留意点

SVDVのサイト1;K-80~A-90は人為変異許容領域であり,第1中和抗原領域に含まれることから,今後はFMDV等の他のウイルスの中和抗原部位のアミノ酸配列との置換を検討していく予定である。

具体的データ

図1 サイト1へのプロリン、セリンの挿入と感染性ウイルスの発現

図2 構造蛋白・VP1のαカーボンモデル

図3 サイト1の3次元構造

図4 サイト1への制限酵素認識配列の導入と感染性ウイルスの発現

その他

  • 研究課題名:口蹄疫等に応用可能な組換えワクチンベクター開発の基礎研究
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成8年度(平成5年~平成8年)
  • 発表論文等:
      1.第122回日本獣医学会講演要旨集,P.186(1996)
      2.第43回 日本ウイルス学会講演要旨集,P.87(1996)