小型ピロプラズマ原虫とマダニの相互関係
※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。
要約
フタトゲチマダニ,マゲシマチマダニの小型ピロプラズマ原虫媒介能について調べたところ,マダニの種類や系統によって原虫の発育が異なることが明らかとなった。
- 担当:家畜衛生試験場 細菌・寄生虫病研究部 原虫病研究室
- 連絡先:0298(38)7753
- 部会名:家畜衛生
- 専門:診断予防
- 対象:牛
- 分類:研究
背景・ねらい
タイレリア病やバベシア病という牛のピロプラズマ病は国内外ともに重要な疾病であり,わが国では特にタイレリア病(小型ピロプラズマ病)が放牧推進上の 大きな障害となっている。これらは原虫,媒介者,宿主の三者間で成立している疾病であるが,マダニによる原虫媒介については今なお不明な点が残されてい る。本研究では,小型ピロプラズマ病に関する基礎的知見を得るため,小型ピロプラズマ原虫(Theileria sergenti, TS)とマダニの相互関係を検討した。
成果の内容・特徴
フタトゲチマダニ(HL)単為生殖系とマゲシマチマダニ(HM)両性生殖系の幼,若ダニをTS感染牛に吸血させ,次期発育期の若ダニ,成ダニ唾液腺内の原虫感染状況(図1)を調べた。
- TS池田株を用いた場合,HLの岡山系統,厨川系統とも若ダニの原虫感染状況は成ダニに比較して高かった。また,若ダニの原虫感染状況は厨川系統,成ダニでは岡山系統が高かった(図2)。
- HMの成ダニはHLの成ダニよりもはるかに高い感染状況を示したが,若ダニはHL両系統の中間の感染状況を示した(図2)。
- 異なる原虫株(千本松株)を用いた場合も,HL両系統,HMの若ダニ及び成ダニの原虫感染状況は同様の結果であった。 これらのことから,マダニの種類や系統によって唾液腺内の原虫感染状況が異なること,すなわちマダニ体内の小型ピロプラズマ原虫の発育に差があることが明らかとなった。
成果の活用面・留意点
野外のフタトゲチマダニにおける小型ピロプラズマ原虫感染状況は,若ダニの方が成ダニよりも高く,今回得られた結果と一致していた。また,マダニ種や系統間で認められた原虫発育の差は各地域での小型ピロプラズマ原虫の媒介に影響を及ぼしている可能性がある。
具体的データ


その他
- 研究課題名:ピロプラズマ原虫と媒介マダニとの相互関係の解明
- 予算区分:経常
- 研究期間:平成7年度~平成8年度
- 発表論文等:
1.第122回日本獣医学会講演要旨集,p.111.(1996).
2.第123回日本獣医学会講演要旨集,p.128.(1997).