牛ネオスポラ原虫の分離とその性状
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要約
ネオスポラ原虫に感染している疑いのある胎児や新生子牛の脳,脊髄組織を収集し,細胞培養系を用いて分離を試みた。その結果,原虫分離に成功し,原虫の免疫学的反応性はアメリカで分離されたネオスポラ標準株と類似するものであった。
- 担当:家畜衛生試験場 総合診断研究部 疫学研究室
- 連絡先:0298(38)7770
- 部会名:家畜衛生
- 専門:診断予防
- 対象:牛
- 分類:研究
背景・ねらい
牛のネオスポラ症は,ネオスポラ原虫の感染による流産や子牛の神経症状を主徴とする疾病である。我が国では1991年の初報告以来,全国22の道府県で
病理学的診断による発生報告があり,これはさらに増える傾向にあり畜産産業上大きな問題となっている。そこでこの感染症の研究,調査,予防法の開発のた
め,細胞培養系を用いたネオスポラ原虫の分離を試みた。また,分離に成功した原虫と標準株との比較,感染試験を行った。
成果の内容・特徴
- ネオスポラ原虫感染の疑いのある流産胎児や胎盤感染した子牛の組織22例を収集し,Vero細胞及び肺動脈内皮細胞に接種した。その結果,茨城県内の新生子牛の神経組織から,接種49日目にネオスポラ原虫の分離に成功した(写真1)。
- 分離された原虫を精製し,間接蛍光抗体法の抗原としてネオスポラ陽性標準血清と反応させたところ,原虫に蛍光色素が観察された(写真2)。
- 間接蛍光抗体法を用いてネオスポラ標準米国株(BPA1)や他の近縁の原虫株との反応性を比較したところ,分離された原虫はネオスポラ標準陽性血清と高い希釈濃度で反応し,他の原虫株の陽性血清とは反応しなかった(表1)。
- 分離された原虫(2×105個)をBALB/cマウス,プレドニゾロンで免疫抑制したBALB/cマウスとヌードマウスに接種したところ,プレドニゾロンで免疫抑制したBALB/cマウスとヌードマウスに削痩や神経症状を呈し(写真3),接種後7日から24日の間に死亡した。
成果の活用面・留意点
今回得られた原虫を用いて,ネオスポラ原虫の間接蛍光抗体法の抗原作製が可能となり,ネオスポラ症の実態を知るための広範囲な疫学調査が可能となった。
また,動物への感染試験や,薬剤の治療効果試験などを行うことも可能となり,今後ネオスポラ症の予防法や治療法の開発が期待される。
具体的データ




その他
- 研究課題名:牛及び豚の異常産発生実態の疫学的研究
- 予算区分:科振調(重点基礎)
- 研究期間:平成8年度
- 発表論文等:
1.Yamane et al. In vitro isolation of a bovine Neospora in Japan, Vet.Rec., 138:p.652(1996)
2.Kokuho et al. Neospora caninum infection in inbred mice, The 77th Conference of Research
Workers in Animal Diseases. p.67(1996)
3.第122回日本獣医学会講演要旨, p.9(1996)
4.第122回日本獣医学会講演要旨, p.119(1996)