牛クッパー細胞の反応解析による内因性エンドトキシンの毒性評価法の開発
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要約
内因性エンドトキシンに対する牛初代培養クッパー細胞の反応を,RT-PCR法を用いて解析した。牛クッパー細胞は,大腸菌エンドトキシン及び牛第一胃液由来内因性エンドトキシン刺激により,炎症性サイトカイン(TNFα, IL-6, IL-1β, IL-1α)及び誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)のmRNAを発現した。従って,牛に対する内因性エンドトキシンの毒性発現における,牛クッパー細胞由来炎症性サイトカインや一酸化窒素の関与が示唆された。
- 担当:家畜衛生試験場 飼料安全性研究部 毒性薬理研究室
- 連絡先:0298(38)7822
- 部会名:家畜衛生
- 専門:毒性
- 対象:牛
- 分類:研究
背景・ねらい
牛の第一胃内で過剰に生成される内因性エンドトキシンは,肝障害,血液疾患,消化管障害など様々な疾病を引き起こして,畜産物生産に量的,質的に重大な 阻害をきたすと考えられている。内因性エンドトキシンの毒性は,肝臓との相互作用で発現すると考えられているが,その詳細なメカニズムは解明されていな い。そこで,牛初代培養クッパー細胞を用いて,内因性エンドトキシンの毒性評価法の開発を試みた。
成果の内容・特徴
- 遠心エルトリエーション法で分離した牛クッパー細胞の収量は1.5x106 cells / g肝,生存率98%以上であった。また95%以上の細胞がα-ナフチル酪酸エステラーゼ陽性,CD68陽性で分化型マクロファージと思われた( 図1,2)。
- 牛初代培養クッパー細胞を,大腸菌 (O111:B4)由来エンドトキシン(1μg/ml) で刺激し,炎症性サイトカインおよび一酸化窒素合成酵素 (iNOS) 遺伝子の発現を解析した。エンドトキシンによる刺激を受けたクッパー細胞では,特異プライマーを用いたRT-PCR法によりTNFα, IL-1β, IL-1αおよび iNOS のmRNAの発現が認められた。IL-6については,未刺激時でも少量のmRNAの発現が見られたが,エンドトキシン刺激によってmRNA発現が増強され た(図3)。
- 牛の第一胃液から粗抽出した内因性エンドトキシン(1μg/ml)でクッパー細胞を刺激したところ,大腸菌由来エンドトキシンと同様に,TNFα, IL-6, IL-1β, IL-1α および iNOS のmRNAの発現が誘導された(図3).
成果の活用面・留意点
牛に対する内因性エンドトキシンの作用機序に,クッパー細胞で産生される炎症性サイトカインや一酸化窒素の関与が示唆された。牛クッパー細胞を用いて の,RT-PCR法による遺伝子発現解析は,牛の消化管内で産生される内因性有害物質の毒性評価法の一つになり得ると考えられる。
具体的データ



その他
- 研究課題名:牛クッパー細胞の反応解析による内因性エンドトキシンの毒性評価法の開発
- 予算区分:短期重点
- 研究期間:平成8年度
- 発表論文等:
1.J. of Endotoxin Res., 3 (supple.1):p.62 (1996)
2.Vet. Immunol. Immunopatho., (in press)
3.第122回日本獣医学会講演要旨集,p.132 (1996)