抗ウシCD2モノクローナル抗体を用いたウシ早期妊娠因子の検出

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要約

市販の抗ウシCD2モノクローナル抗体を用いたロゼット抑制試験によりウシ早期妊娠因子を検出する方法を開発した。この方法により妊娠および非妊娠を排卵後24時間から判別できることが明らかとなった。

  • 担当:家畜衛生試験場 病態研究部 保健衛生研究室
  • 連絡先:0298 (38) 7784
  • 部会名:家畜衛生
  • 専門:診断予防
  • 対象:牛
  • 分類:研究

背景・ねらい

ウシの低受胎(リピートブリーディング)は発情周期がほぼ正常に営まれており,臨床検査で卵巣および副生殖器に特に異常が認められないにもかかわらず, 反復して授精されても受胎しない状態である。その原因として受精障害と胚の早期死滅が挙げられているが,受精障害と胚の早期死滅を的確に区別する診断技術 は確立されていない。そこで受精後早期に母体血中に出現し,胚の回収や流産により速やかに消失する早期妊娠因子(EPF)を胚の生存性モニタリングのマー カーとして活用するため,入手の容易な市販の抗ウシCD2モノクローナル抗体を用いたウシEPFの検出法について検討した。

成果の内容・特徴

  • 市販の抗ウシCD2モノクローナル抗体を用いたEPF検出が可能かどうかを検討するため,妊娠および非妊娠牛からのプール血清についてウシ末梢血 リンパ球とヒツジ赤血球とのロゼット抑制試験を行い,ロゼット形成率が対照(抗体無添加)の75%以下となる抗体希釈倍率の中で最大の希釈倍数の対数をロ ゼット抑制力価(RIT)として算出した。その結果,妊娠血清は非妊娠血清に比べ有意に高い値を示し,抗ウシCD2モノクローナル抗体を用いたロゼット抑 制試験によりウシEPFが検出できることが明らかとなった(図1)。
  • 妊娠牛および非妊娠牛について各個体ごとのRITにより妊娠および非妊娠の判別が可能であるかを検討したところ,RITは妊娠牛で6~8,非妊娠牛で2~3の範囲にあり,この方法により,妊娠および非妊娠を明確に区別できることが明らかとなった(図2)。
  • さらに,同一個体から経時的に血清を採取してロゼット抑制試験を行い,RITを算出した。その結果,妊娠例においてウシEPFは少なくとも排卵後24時間から検出されることが示された(図3)。

成果の活用面・留意点

市販の抗ウシCD2モノクローナル抗体を用いたロゼット抑制試験により,ウシEPFが高感度に検出できることが示された。しかし,ロゼット抑制試験は操作が煩雑なため,臨床応用するためにはより簡便にEPFを検出する方法を開発する必要がある。

具体的データ

図1 妊娠および非妊娠プール血清によるロゼット制御試験

図2 妊娠および非妊娠個体の排卵後3~14日目におけるRIT値

図3 妊娠および非妊娠個体におけるRIT値の推移

その他

  • 研究課題名:牛早期妊娠因子の安定的検出法の開発
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成6年度~平成8年度
  • 発表論文等:
      1.第117回日本獣医学会講演要旨集, p.222 (1994).
      2.J.Vet.Med.Sci., 57:721-725 (1995).