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新しく樹立したCPK-NS細胞は無血清培養液で増殖し,豚コレラウイルスGPE-株の感 染により明瞭な細胞変性効果(CPE)を示す。このCPEを指標にして中和抗体価測定法を開発し,従来法との高い相関性を確認した。
豚コレラウイルス(CSFV;フラビウイルス科,ペスチウイルス属;+鎖RNAウイルス)は培養細胞に対し明らかな細胞変性効果(CPE)を示さないため,ウイルスの定量や抗体検査にはEND法,干渉法,酵素抗体法及び蛍光抗体法等が用いられている。しかし,これらの方法は手技が煩雑であったり,強毒のCSFVやニューキャッスル病ウイルスを必要とする等の問題がある。また,細胞培養に用いるほとんどの牛血清にはCSFVと共通抗原性を示す牛ウイルス性下痢ウイルスの抗体が存在し,抗体陰性血清の入手が困難となっている。これらの問題を解決するために,無血清培養が可能なFS-L3細胞を樹立し,ウイルス増殖,中和抗体価測定等への応用を行ってきた(家畜衛生研究成果情報 No.9)。今回,新たに中和抗体価測定に有用な無血清培養細胞株CPK-NS細胞を樹立し,FS-L3細胞を用いた中和試験等との比較検討により,その有用性を検討した。
豚腎上皮細胞由来の株化細胞(CPK細胞)を親細胞とし,継代時の培養液中の血清濃度を徐々に減少させ,最終的にイーグルMEMに0.5% Bacto Peptone,0.295% Tryptose Phosphate Broth,10 mM N, N-Bis (2-hydroxyethyl)- 2-aminoethanesulfonic acid(BES)を加えた無血清培養液で増殖可能な細胞株(CPK-NS細胞)を樹立した。本細胞にEND現象を起こさない豚コレラウイルス株(GPE-,ALD-END-,Ames-END-株)を接種することによって明瞭なCPEが確認された(図1,表1)。この明瞭なCPEを指標として,豚コレラウイルスの中和抗体価測定法を確立した。新しい方法で測定した中和抗体価は,FS-L3細胞を用いたドームを指標とした測定法(家畜衛生研究成果情報 No.9)および国際的標準法である酵素抗体法による抗体価と高い相関性を示した(図2)。さらに,CPK-NS細胞を用いた中和抗体価測定法は,被検血清の血清濃度による影響を受けず,安定な結果を得ることができる。
CPK-NS細胞を用いた中和抗体価の測定法は,現在実施されている豚コレラウイルス撲滅事業におけるワクチン中止後の抗体検出を目的としたサーベイランスに大きな役割を果たす。