環境材料よりのListeria monocytogenes選択分離法
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要約
2段階増菌後パルカムサプリメント加血液重層寒天培地にて分離培養することにより,リステリア属菌が存在する可能性のある環境材料からListeria monocytogenesを効率よく分離することが可能であった。
- 担当:家畜衛生試験場北海道支場臨床微生物研究室
- 連絡先:011(851)5226
- 部会名:家畜衛生
- 専門:診断予防
- 対象:牛,豚,鶏
- 分類:普及
背景・ねらい
家畜に脳炎,敗血症,死流産を引き起こし、人には致死率の高い感染症を起こすListeria monocytogenes(以下LM)の環境材料からの分離は,1960年にGrayらによるサイレージからの分離報告以降多くの報告がある。しかし,畜産環境における本菌の生態には不明な点が多い。そこで,LMの生態を解明する第一歩として,同菌の効率的分離法を検討した。
成果の内容・特徴
- [基礎的検討]増菌培地としてFDA処方リステリア選択増菌培地(FDA),UVM処方リ ステリア選択増菌培地(UVM),緩衝リステリア増菌ブイヨン(BLEB)及びフレイザー培地(F)を,分離培地としてOxford処方リステリア選択培地,パルカム培地(パルカム),血液寒天培地(血寒)及び血液重層寒天培地(血重)を比較した(血寒及び血重以外はオクソイド社製を用いた)。まず,LM(ML-2株)を接種したサイレージを用いて検討を行った。その結果,増菌法としてはUVM-1あるいはBLEB培地に接種して30°C1日培養後,フレーザー培地に移植して35°C1日培養する2段階増菌法が1段階増菌法よりも優れていた。また,分離培地の選択効果はパルカムがもっとも優れていた。
- [環境材料を用いた検討]この結果を基に,LMによる牛の流産が発生した農家の 環境材料を用いて検討を行なった。LM以外のリステリア属菌種が混在している環境材料のLMの陽性率は,パルカム及び血重はそれぞれ2/15及び3/13と低値を示した。そこで選択性に優れ,かつ溶血を指標に釣菌できることを目的に,パルカムサプリメント加血液重層寒天培地(パ血重)(図1,2)を試作した。その結果,パ血重の使用により分離率は13/15と飛躍的に向上した。
- 以上の成績より,リステリア属菌が存在する可能性のある環境材料を,BLEB-FあるいはUVM-Fの2段階増菌後パ血重にて分離培養することにより(図3),LMが効率的よく検出されることが明らかになった
成果の活用面・留意点
- 釣菌コロニーは溶血及びパルカム培地等でのエスクリン分解能を指標として再クローニングすること事が望ましい。
- LMの最終同定は生化学的性状検査等に基づいて行う。
- パルカムサプリメントはオキソイド社製及び同等品を用いる。
具体的データ



その他
- 研究課題名:Listeria monocytogenesの生態解明法の検討
- 予算区分:経常(場内プロ)
- 研究期間:平成9年度~10年度
- 発表論文等:第125回日本獣医学会講演要旨集(1998)