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豚コレラ(CSF)ウイルス強毒ALD株とワクチンGPE-株に対する単クローン抗体(MAb)を20株作製した。これらのMAbパネルにより,20株のCSFウイルスは6タイプに分かれ,CSFウイルスと牛ウイルス性下痢・粘膜病(BVD-MD)ウイルスの識別だけでなくCSFウイルスの野外分離株とワクチンGPE-株の識別が可能であった。
現在,豚コレラ(classical swine fever;CSF)清浄化推進事業が進められており,従来にもましてCSFの迅速診断が必要となっている。CSFの病原学的診断は,主として蛍光抗体法による臓器切片中のウイルス抗原の検出とウイルス分離により行われるが,強毒株とワクチン株の識別および豚にも感染性のある牛ウイルス性下痢・粘膜病(BVD-MD)ウイルスとの識別が重要となる。ポリクローナル血清では上記のウイルス株を識別できないため,CSFウイルスに対するモノクローナル抗体(MAb)を作出し,CSFウイルス野外分離株に対する反応性を調べた。
CSFウイルス強毒ALD株およびワクチンGPE-株を免疫原とし,常法にしたがってMAbを作製した。スクリーニングは間接蛍光抗体法で行った。その結果,ALD株とGPE-株に対するそれぞれ18株と2株のMAbが得られた(図1)。CSFウイルス20株とBVD-MDウイルス3株に対して蛍光抗体法によりこれらのMAbの反応性を調べたところ,I:すべてのCSFウイルスとBVD-MDウイルスに反応する抗体 II:すべてのCSFウイルスに反応するがBVD-MDウイルスに反応しない抗体 III:GPE-株以外のすべてのCSFウイルスに反応する抗体 IV,V,VI:一部のCSFウイルスに反応する抗体 VII:GPE-株にのみ反応する抗体の7群に分類された(表1)。このうちVIグループのMAbのみが中和活性を持っていた。
これらの7種の代表的なMAbパネルを用いることにより,CSFウイルスとBVD-MDウイルスの識別だけでなく,CSFウイルスの野外分離株とワクチンGPE-株の識別が可能であった。また,CSFウイルスは6タイプに分かれ,抗原性の多様性が認められた(表2)。
CSFを疑う症例の臓器凍結切片あるいは分離ウイルス感染細胞をこれらのMAbと反応させることにより,CSFの診断が可能である。