豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス感染豚のリンパ組織におけるリンパ球サブポピュレーションの初期変化
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要約
実験感染豚における豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)ウイルスの体内および組織内局在とリンパ組織でのリンパ球サブポピュレーションの変動を調べたとこ
ろ,PRRSウイルスは感染初期から,肺,リンパ組織のマクロファージに存在し,一部のリンパ組織ではリンパ球サブポピュレーションの変動があることが示
された。これらの成績から,PRRSウイルス感染豚では免疫応答の変調を起こしていることが示唆された。
- 担当:家畜衛生試験場総合診断研究部環境衛生研究室
- 連絡先:0176(62)5115
- 部会名:家畜衛生
- 専門:診断予防
- 対象:豚
- 分類:指導
背景・ねらい
豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)は,PRRSウイルスとともに様々な微生物の混合感染が認められる豚の複合感染病であり,豚の肺胞洗浄液から調製した肺胞マクロファージはPRRSウイルスに高い感受性を示す。宿主内において肺胞マクロファージは呼吸器系の感染防御において中心的役割を果たすことから,PRRSウイルスは肺胞マクロファージを含む免疫担当細胞に何らかの影響を与え生体防御能を障害すると考えられる。そこで,豚体内におけるPRRSウイルスの標的細胞を同定するとともに,ウイルスの体内動態および免疫担当細胞との関連を調べた。
成果の内容・特徴
- PRRSウイルスChiba92-1株を1ヶ月齢のSPF豚に鼻腔内接種したところ,感染初期からPRRSウイルス抗原保有細胞が肺およびリンパ組織に認められた(図1)。これらのPRRSウイルス抗原保有細胞は形態学的にマクロファージであると推定された 。
- PRRSウイルスの組織内標的細胞をさらに詳細に検討するために,細胞マーカーとPRRSウイルス抗原との2重染色を行った。その結果,肺およびリンパ組織におけるウイルス標的細胞は主にマクロファージであることが明らかとなった(図2)。
- PRRSウイルス抗原がリンパ組織から検出されたので,PRRSウイルス感染によるリンパ組織への影響が推測された。そこで,リンパ組織における感染初期のPRRSウイルスによるリンパ球サブポピュレーションへの影響を画像解析法によって調べた。その結果,脾臓および浅鼠径リンパ節でのCD8リンパ球数とパイエル板でのBリンパ球数の上昇が認められた(図3)。以上の結果はPRRSウイルス感染豚のリンパ組織において免疫応答の変調が起こっていることを示唆する。
成果の活用面・留意点
PRRSウイルスの病理発生機序の一端が解明された。またPRRSウイルスの免疫組織学的な検出が可能になり,標的臓器が特定されたことから野外におけるPRRSの診断の一助となる。
具体的データ



その他
- 研究課題名:豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルスについての組織内局在の検出と免疫担当細胞との関連の検討
- 予算区分:経常研究
- 研究期間:平成7年~平成9年
- 発表論文等:
- 第120回日本獣医学会講演要旨集, p.74 (1995)
- 第122回日本獣医学会講演要旨集, p.41 (1996)
- 77th Conference of Workers in Animal Disease (Chicago), P.78 (1997)
- J.Comp.Pathol., 114:313-323 (1996)