豚インターロイキン2(IL-2)受容体α鎖遺伝子の単離
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要約
豚IL-2受容体α鎖のcDNAおよびゲノムDNAを単離し,当該分子の一次構造ならびにゲノム構造を解明した。また本遺伝子が8つのエクソンから構成され,第10染色体長腕上に存在することが明らかとなった。
- 担当:家畜衛生試験場製剤研究部製剤工学研究室
- 連絡先:0298(38)7864
- 部会名:家畜衛生
- 専門:生体防除
- 対象:豚
- 分類:研究
背景・ねらい
免疫応答の中枢であるT細胞は,細胞膜上に存在する抗原受容体を介した刺激により活性化され,T細胞増殖因子であるインターロイキン2(IL-2)をはじめ種々の分子の発現,分泌を行う。IL-2受容体を構成するα鎖分子もT細胞の活性化にともなって発現されるタンパク質で,恒常的に発現するβおよびγ鎖と会合してヘテロ三量体型のIL-2受容体を形成する。IL-2に対し高親和性を有するヘテロ三量体型受容体の発現によって,抗原刺激に応答したT細胞群のIL-2感受性が著しく亢進し,増殖分化が誘導される。本分子の発現は,抗原刺激ならびに共存するサイトカインに依存した制御を受けており,この制御機構の解析によって免疫応答を司るT細胞の活性化機序の一端が解明されると考えられる。そこで,家畜におけるIL-2受容体α鎖分子発現調節機構を解析する端緒として,当該遺伝子の単離を試みた。
成果の内容・特徴
- コンカナバリンAで刺激した豚の末梢血単核球のmRNAよりcDNAライブラリーを作製した。これをマウスのIL-2受容体α鎖遺伝子をプローブに用いたプラークハイブリダイゼーション法に供して,豚ホモローグのcDNAクローンを単離した。(Genbank U78317)
- COS細胞を用いて豚のIL-2受容体α鎖を発現させ,本分子に特異性を有すると考えられているモノクローナル抗体231-3B2を用いて免疫染色を実施した(図1)。この結果,231-3B2抗体の特異性が分子レベルで確認された。
- 豚のIL-2受容体α鎖のゲノムDNAを単離し,イントロン1を除く全塩基配列を解析し,ゲノム構造を明らかにした(図2)。(Genbank AF036005及びAF052037)
- 豚IL-2受容体α鎖のゲノムDNAをプローブに用いたFISH法による遺伝子マッピングの結果,本遺伝子が第10染色体長腕の末端近傍にマッピングされた。
成果の活用面・留意点
今後は本研究によって単離された遺伝子を利用して,豚IL-2受容体α鎖の発現調節機構について細胞レベルならびに分子レベルでの解析を行う。
具体的データ


その他
- 研究課題名:家畜のサイトカインの遺伝子発現および生物活性評価システムの確立
- 予算区分:連携開発研究(サイトカイン)
- 研究期間:平成9年度~平成14年度
- 発表論文等:
1.Immunol. Cell Biol., 75: 515-518 (1997)
2.8th Fisher Winternational Symposium on Cellular and Molecular Biology, Banff (1998)